読むナビDJ :第35回:イーグルスだけじゃない、70年代ウエストコースト・ロック・バンド名作10選

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第35回:イーグルスだけじゃない、70年代ウエストコースト・ロック・バンド名作10選

多くの人からリクエストがあり、60年末から70年代に活躍したウエストコースト・ロック・バンド10選を特集。初級者にもマニアにも充分読み応え&見応えのある特集です。

この記事の筆者

音楽評論家。ミュージック・ペンクラブ・ジャパン会員。ミュージック・マガジン誌、レコード・コレクターズ誌、ギター・マガジン誌などの音楽誌に定期的に寄稿。『ライ・クーダー/流れ者の物語』『ジェフ・マルダー/シークレット・ハンドシェイク』『マイケル・ハーレイ/アームチェア・ブギー』などのCDの解説、共著など多数あり。

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ウエストコーストのロック・サウンドといえば、カリフォルニアの青い空、真夏の太陽がふりそそぐビーチ、そして健康的でチャーミングな女の子たち、こんなイメージで語られることが多いかと思う。ところがそれぞれのバンドをじっくりと眺めていくと、実に多彩で複雑な音楽性を秘めているのが分かるはずだ。

代表格といえるイーグルスにしても、リンダ・ロンシュタットのバック・バンドとしてスタートし、最初はカントリー・ロック的なサウンドを得意としていた。メガ・ヒットとなった「ホテル・カリフォルニア」は1976年の作品で、彼らのキャリアの中では後期に属する。

その「ホテル・カリフォルニア」にしても、単純な“カリフォルニア賛歌”などではなく、非常にシニカルな内容の歌詞を持った曲で、西海岸精神(スピリット)の終焉を歌い上げていたのだ。

Buffalo Springfield「For What It's Worth」



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バッファロー・スプリングフィールドを、ウエストコースト・ロック・バンドの冒頭に持ってくることに抵抗のある方もいるかもしれないけれど、その後の、クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤングロギンス&メッシーナポコなどの西海岸サウンドの流れを考えると、やはり外せない。

ニール・ヤングスティーヴン・スティルスリッチー・フューレイジム・メッシーナらが同じステージに立っていただけでも奇跡。60年代の末期は、ロックとポップスとが分岐し始めたばかりで、些かワイルドに聞こえるかもしれないが、ウエストコースト・ロックのスピリッツが充分に注入された曲だ。この「フォー・ホワット」も、明快なリズムそして抜けるようなコーラスという西海岸の定型を作り出していった。

Harpers Bizarre「Anything Goes」



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ウエストコースト・ロックのもうひとつの源流が、このハーパーズ・ビザールだ。コーラス・グループのような、ロック・バンドのような不思議な存在で、何よりもセンスの良さが魅力だった。古き良き時代の曲などを、自分たち流にリアレンジメントするのが得意で、「ハッピー・トーク」や「チャタヌガ・チュー・チュー」といった昔のポピュラー・ソングを甦られている。

「エニシング・ゴーズ」は、フランク・シナトラトニー・ベネットが歌っていた古いポップ・ソングをアレンジしたもの。ノスタルジックな装いを粉砂糖のようにまぶした編曲が素晴らしい。今でいうところのソフト・ロックの原型を作り出したと言ってもいいだろう。メンバーのテッド・テンプルマンは、その後ワーナー・ブラザーズのプロデューサーとして大活躍。レニー・ワロンカーラス・タイトルマンヴァン・ダイク・パークスらと共に、バーバンク・サウンドを打ち立てていく。

Doobie Brothers「Listen to the Music」



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そのテッド・テンプルマンが手がけたバンドが、ドゥービー・ブラザーズだ。1972年にリリースした2枚目のアルバム『トゥールーズ・ストリート』に収録された「リッスン・トゥ・ザ・ミュージック」が大ヒットし、一躍ロック・シーンに踊り出していく。

その後の、1975年にマイケル・マクドナルドが加入してからのドゥービー・ブラザーズは、洗練されたシティ・ポップ風な路線を突き進んでいくが、初期は荒削りで男臭い。とはいえハード・ロック的なアプローチとはまるで違っていて、この「リッスン・トゥ・ザ・ミュージック」にしても、ギター・ストロークを上手く活かしたり、コーラス・ワークを存分に使ったりと、西海岸的な要素がしっかりと詰め込まれている。

Eagles「Take It Easy」



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ウエストコースト・ロックといえば、やはりカントリー・ロックの話をしなければ始まらない。旧来のカントリー・ミュージックをロックに置き換えるのではなく、真新しい感覚を付け加え西海岸らしいサウンドを打ち立てていった。その先鋒となっていったのが、イーグルスだったのだ。これには、ベイカーズフィールド一派と呼ばれたカントリー・ミュージックの新しい流れも無関係ではなかった。

初期のイーグルスの立役者のひとりがバーニー・レドンで、バンジョーやストリングベンダー・ギター(エレクトリック・ギターでペダル・スティールのような音を出すことができる)などを駆使し、バンドの音楽性を広げていった。イーグルスの前身となるグループ、シャイロ(Shiloh)を聞いてもそう思うが、彼らの根底にフォーキーな部分があることも忘れてはならない。

Flying Burrito Brothers「Christine's Tune」



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イーグルスに先がけてカントリー・ロックのサウンドを押し進めていったのが、フライング・ブリトー・ブラザーズだ。一時期バーズに加入していたグラム・パーソンズを中心に、やはりバーズにいたクリス・ヒルマンや、スタジオ・ミュージシャンをしていたクリス・エスリッジなどが参加していた。


イーグルスと比べて、サウンド的には若干カントリー・ミュージック寄りだが、スピリッツそのものはヒップで、ロックの感性に溢れていた。バーニー・レドンも、イーグルスを結成する前は、このフライング・ブリトー・ブラザーズに参加していた。「悪女の歌(Christine's Tune)」は、グラム・パーソンズクリス・ヒルマンの共作曲。オリジナル曲の良さも、フライング・ブリトー・ブラザーズの魅力のひとつであった。

POCO「And Settling Down」



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フライング・ブリトー・ブラザーズと並ぶ、もうひとつの雄が、リッチー・フューレイジム・メッシーナと組んで作ったポコだった。フューレイとメッシーナは、ともにバッファロー・スプリングフィールドの後期メンバーで、バッファローが持っていたカントリー・ロッキンなセンスを抽出したようなグループだった。

初期の「ピッキン・アップ・ザ・ピーセス」などを聞いても、初々しく拙い部分もあるが、カントリー・ミュージックを自分たちのほうに近づけようとする努力ははっきりと見て取れる。このポコには、後にイーグルスに加入するティモシー・シュミットが参加していた。カントリー・ロック~ウエストコースト・サウンドの系譜を考える意味でも、重要なグループだといえるのだ。

Little Feat「Rock & Roll Doctor」



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カントリー・ロックとは別の文脈から西海岸的なサウンドを築きあげていったのが、ロウエル・ジョージ率いるリトル・フィートだ。彼らの音楽は、ニューオーリンズのR&Bや、南部系のリズム&ブルースなどがベースとなっている。やはり、リード・ヴォーカリストでありスライド・ギターの名手でもあったロウエル・ジョージの魅力に尽きるだろう。

ロウエル・ジョージは、フランク・ザッパマザーズのメンバーだったのだが、ビル・ペインリッチー・ヘイワードを誘ってリトル・フィートを結成。ねっとりと汗ばむようなサウンドは、爽やかさとは無縁ながらも、これもウエストコーストのサウンド。なお仕掛け人は、バーバンク・サウンドの生みの親のひとりであるラス・タイトルマン

Fools Gold「Rain,Oh, Rain」



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イーグルスドゥービー・ブラザーズに続く、西海岸派の第二世代ともいえるのが、このフールズ・ゴールドシルヴァーだ。フールズ・ゴールドは、1976年にアリスタ・レコードからデビューした。

西海岸の期待の星ということで、デビュー・アルバムには豪華なゲストが参加している。プロデューサーは、イーグルスのデビュー・アルバムを手がけたグリン・ジョンズ。そのイーグルスからは、ジョー・ウォルシュドン・フェルダーが加わっている。「雨に願いを(Rain,Oh, Rain)」を聞いても分かるように、ジェントルでハーモニーのきれいな正統派ウエストコースト・サウンド。ただ時代が遅かったのか、商業的にあまり大きな成功をおさめなかったようだ。

Silver「Musician」



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フールズ・ゴールドと同時期にデビューし、レーベルも同じアリスタ・レーベルだった事もあり、ともにライヴァルとして注目された。バドロフ&ロドニージョン・バドロフが中心となったグループで、繊細なハーモニーと曲作りの良さでは定評があった。

このシルヴァーには、イーグルスの初期メンバーであるバーニー・レドンの弟、トム・レドンが参加している。このあたりも、西海岸一派の流れを感じさせるところだ。1976年のデビュー・アルバムに収められていた「ミュージシャン(Musician (It's Not An Easy Life)」は隠れ名曲で、未だに人気が高い。ミュージシャン家業の辛さを切なく歌い上げている。

The Souther-Hillman-Furay Band「Fallin' in Love」



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ウエストコースト・ロック界のスーパー・グループともいえるのが、このサウザー・ヒルマン・フューレイ・バンドイーグルスグレン・フライロングブランチ・ペニーウィッスルというコンビを組んでいたことのあるJ. D. サウザー。元バーズのメンバーで、グラム・パーソンズフライング・ブリトー・ブラザーズを率いていたクリス・ヒルマンバッファロー・スプリングフィールドを経てポコを結成、そのポコを抜けてサウザー・ヒルマン・フューレイ・バンドに合流したリッチー・フューレイと、まさに西海岸ロックの歴史のようなグループだ。

1974年にアサイラム・レコードよりデビュー。ソングライターが集まっているだけに、曲の出来映えはどれも素晴らしかった。ただレコード会社が目論んだようなクロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング的な方向にはいかず、ユニットとしてもまとまりは希薄だった。とはいえ、ウエストコースト・ロックの華やかさを存分に体現したグループだったのは間違いない。

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