コラムスピン :第53回:世界で拡大し続ける、音楽ストリーミング・サービス最新情報

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第53回:世界で拡大し続ける、音楽ストリーミング・サービス最新情報

ほぼ毎週、世界中のどこかから新しいニュースが飛び込んでくるので2013年1月28日時点でのまとめです。

この記事の筆者

学生時代は米国オレゴン州で生活。高校でネットラジオ、大学でNapsterを体験、以来オンラインテクノロジー x 音楽コンテンツ x 人の在り方について関心を持つ。海外のデジタル音楽トレンドをテーマに、ソーシャルな音楽サービスや業界の最新動向、デジタルを活用したアーティストのクリエイティブなプロモーション活動事例をいち早く日本で紹介するブログを運営しています。ジャズのアナログレコードから、ネットでの音楽発掘まで、幅広くインディーズ系アーティストを応援しています。

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今月始め、レコチョクがスマートフォン向けに定額制聴き放題サービス「レコチョクBest」を開始すると発表されました。

3月から始まる音楽サービスは月額980円でJ-POPを中心に約100万曲からストリーミング再生ができるという内容です。またレコチョクの発表よりも少し前には、DeNAがスマホ向けの定額制音楽サービス「Groovy」をまもなく開始すると発表しました。24のレコード会社が当初は参加し約100万曲以上の楽曲カタログが提供される予定です。
既に昨年、スマホではauの「LISMO unlimited」、パソコン、スマホ、Playstation®3、ウォークマン他のデバイスに対応したソニーの「Music Unlimited」が先行してサービス中です。

2012年から2013年にかけて日本でも「定額制音楽ストリーミングサービス」の話題が多く聞かれるようになりました。またSpotifyやRdioなど、世界では利用が始まり大きな注目を集めているサービスが2013年には日本に上陸するのではという話もあります。

定額で音楽を好きなだけ聴くことができる音楽ストリーミングサービスがようやく日本でも本格的に使える日がすぐそこまで来ていると考えただけで、音楽ファンの自分はワクワクしてしまいます。

音楽ストリーミングサービスは、これまでには無い音楽とテクノロジーの組み合わせによって作られています。これによりリスナーや音楽業界を取り巻く環境も著しく変化しています。今回は、2013年が「音楽ストリーミングサービス元年」になるであろう日本に向けて、世界の音楽ストリーミングサービス事情をご紹介したいと思います。

音楽ストリーミングサービスとは

音楽ストリーミングサービスとは、無料または月額定額料金で好きな音楽をPCやスマートフォン、タブレットでストリーミング再生できるサービスです。ユーザーはサービスのクラウドに保存されている音楽にアクセスするため、1曲ずつダウンロードする必要がなく、オンライン環境であれば無制限で何曲でも再生することができます。通常、海外のストリーミングサービスは無料と有料の料金形態のある「フリーミアム」モデルを導入していることが多く、有料会員になることでスマートフォンからのアクセスや、数曲の途中に入る音声広告を外せたり、オフラインで視聴が可能になるモードなど無料ユーザーには使えない便利な機能が利用できるようになります。大手レコード会社やインディーズ・レーベルと配信のライセンス契約を締結しているため、楽曲もロック、ヒップホップ、R&B、エレクトロニック、ジャズ、クラシックまで幅広い中から選ぶことができます。またFacebookなどソーシャルメディアとも連携しているので、友人知人と同じ趣味の音楽でつながることや、聴いた曲を共有することも可能になります。

はっきり言えることは、音楽ストリーミングサービスはこれまでの音楽サービスとは全く違うサービスだということです。

人気のストリーミングサービス

世界的に最も大きく注目を集めているのが、スウェーデンで生まれた「Spotify」です。

Spotifyは、現在世界20ヶ国でサービスを展開しているストリーミングサービスで、その規模はアクティブユーザー数2000万人、有料会員数500万人とこの分野では最大で更に拡大していっています。「日本上陸はいつか?」といつも言われるサービスなので、みなさんも聞いたことはあるかもしれません。





Spotifyは他社に比べて革新的なサービスを多く発表している注目の企業です。その一つが「Spotify音楽アプリ」で、Spotifyのアプリ内にサードパーティ製の専用音楽アプリが組み込まれ、「音楽発見」・「ソーシャル」などのテーマ別にSpotifyの音楽と連動した音楽体験が楽しめるようになっています。Spotifyはまた昨年30億ドルの新しい資金を投資家から調達しました。そこにはコカコーラも投資しており、Spotifyと企業やブランドとのつながりが今後も広がることを予感させます。

デモンストレーション動画 “Music discovery on Spotify gets personal”


世界最大の音楽マーケットのアメリカにも複数のストリーミングサービスがあります。そのうちの一つが、Skypeの創業者が設立した「Rdio」。こちらは現在世界17ヶ国で展開して、日本での開始が待たれるサービスです。デザイン性やモバイルなど魅力的な要素をユーザーに提供すると同時にアーティストにもユニークなサービスを提供しています。それは「アーティスト・プログラム」と呼ばれる取り組みで、Rdioで配信するアーティストがファンを有料会員にすることができれば10ドルを支払うという、アーティストにやさしい(笑)サービスを展開しています。ストリーミング再生からのロイヤリティでは不満のアーティストに新しい収益手段を提供し差別化を図っています。



アメリカの「MOG」というストリーミングサービスは、昨年高級ヘッドフォンメーカーの「Beats by Dr. Dre」に買収され、新しいサービスへと生まれ変わることが期待されています。Beatsは言わずと知れたヒップホップの名プロデューサー、ドクター・ドレーと、レコード業界内で大きな影響力を持つビジネスマン、ジミー・アイオヴィンによって設立されたブランド。今はこの二人が中心になっていますが。その前は携帯電話メーカーHTCが大株主だったため、モバイル分野に強いつながりがあります。ちなみにドクター・ドレーは2012年に最も稼いだアーティストで、その収入の大半はヘッドフォンの売上でした。




ドクター・ドレー

Beatsが目指す新しい音楽ストリーミングサービスは「Daisy」と呼ばれています。サービスの開始時期や内容ははっきりしていませんが、恐らくヘッドフォンなどで蓄積した技術を用いた高音質ストリーミングサービスになるのではと言われています。また、「Daisy」プロジェクトにはドクター・ドレーはもちろん、インディーズ・アーティストのナイン・インチ・ネイルズことトレント・レズナーが直接関与していることから、他社と比べアーティストやコアファンに対してメリットの高いサービスになると予想されます。

この他にはヨーロッパ最大で米国と日本以外の世界進出を目指すフランスの「Deezer」、インド最大の「Dhingana」、マイクロソフトが展開する「Xbox Music」、サムスンの「Music Hub」、ナップスターを買収したRhapsodyなどなど数えきれないほどのサービスが世界では展開されています。音楽ファンは、新しい音楽プレーヤーやシステムを購入することなく、数あるサービスの中から、自分のライフスタイルや手持ちの端末に合ったサービスを見つけ簡単に音楽を楽しむことができる便利なサービス、それが「音楽ストリーミングサービス」です。

今後期待されること

これからは今後このサービスをより多くの利用者に使ってもらうために何が出来るかについて少しまとめてみたいと思います。

まず始めはコンテンツの充実だと思います。日本でも世界でも音楽ストリーミングサービスで議論となるのが、どのアーティストが配信されるのかです。

Spotifyでは、大物アーティストが配信されていないという状況があります。このケースには、2つのパターンがあります。一つ目は、新作をリリース時に配信しないアーティストがいること。例えばコールドプレイテイラー・スウィフトリアーナザ・ブラック・キーズDeadmau5など大物アーティストは売上や独自のプロモーションを最大化するために、新アルバムをリリースと同時に配信しないことを決定しました。彼らは、普段から活動をフォローし新作を確実に購入してくれる熱心なファンが存在する中で、タダで聴くだけの無料ユーザーが存在することは不公平だし、セールスの低下を招くかもしれないと危惧し、配信時期を遅らせます。このようにリリースから数ヶ月経ったころに配信を開始する戦略は「ウィンドウィング」と呼ばれています。


コールドプレイ

2つ目のパターンは、楽曲自体をストリーミングサービスに提供していないアーティストが存在することです。これは、超大物アーティストに該当することで、有名なのはビートルズレッド・ツェッペリンピンク・フロイドイーグルスなどがここに該当します。彼らはストリーミング再生から得る収入などよりも、CDやダウンロード売上のほうが利益が大きいため、無料で視聴させることにあまりメリットを感じていないと言われます。この2つのパターンが作る状況が大きくなればなるほど、ユーザーへの魅力が減り、サービスを利用したいという思いが減ってしまうのが課題です。


ザ・ビートルズ

この問題の解決に向けて、大手レコード会社の経営者達が公の場で「ウィンドウィング」はファンに対して親切では無いとして反対する意思を見せ始めています。またSpotifyなどは配信していないアーティストに直接参加のメリットを訴えかけた上で配信を解禁させる地味な取り組みを行なっています。一気にとは行かないでしょうが、昨年iTunesにソニーが楽曲を公開したように、小さな歩み寄りが今後も続きます。

また、モバイルユーザーに魅力を訴求できるかも重要です。今後はスマートフォンやタブレットなどモバイルがPCに代わって多く長時間利用されるようになります。これまでのように1曲ずつダウンロードするやり方だと、小さい端末のメモリーを多く占めてしまいまたダウンロードに要する時間やバッテリーも消費が激しく利用者にとってデメリットが多くなるため、モバイルで音楽にアクセスしたくないと思わせてしまうでしょう。一方で音楽ストリーミングサービスの場合なら、アプリから即座に再生ができ、またダウンロードする必要も無いため、モバイル環境に最適なサービスと言えるでしょう。

ですがただモバイルで聴けるだけでは、iPodやYouTubeアプリと全く変わりません。モバイルだからこそできる新しいリスニング体験を提供することによって、多くの利用者に好きになってもらえるサービスになると思っています。

最後に。コンテンツやモバイルはシステムが変わることで補うことができます。しかし、利用者を増やす上で最も重要なこと。それはリスナー環境が変わることです。音楽ストリーミングサービスを通じて、音楽は楽しい、もっと接していたい、と日常的に思う人が一人でも多く増えてくれることを願っています。そのためには、Spotifyが上陸するとか、新しいサービスを構築するとか、システムが向上するだけでは駄目です。「フリーミアム」、「モバイル」、「ソーシャル」、「音楽アプリ」、「検索」などを駆使しながら音楽とリスナーの継続的なつながりを維持していくことが大切です。そして音楽を聴く面白さ、出会うことの魅力が日常的に感じられ、音楽の魅力でシーンが盛り上がることが、音楽ストリーミングサービス普及に最も必要な要素だと思います。

今年、音楽視聴はどのように変わっていくのでしょうか。今年の日本から目が離せません。

■この筆者「Jay Kogami (ジェイ・コウガミ)」の関連リンク

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