読むナビDJ :第58回:キューバ音楽の新潮流

更新

バックナンバー一覧

第58回:キューバ音楽の新潮流

「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」の影響で「キューバ」に若いミュージシャンがいることを忘れがちですが、やっぱりイイのたくさんあります!!まずは見てみてください。

この記事の筆者

音楽&旅ライター。レコード会社勤務の傍らDJ、執筆、「喫茶ロック」企画などで活動。退社後、2年間に渡って中南米を放浪し祭りと音楽を堪能。帰国後は「ラティーナ」誌でのアルゼンチン音楽連載をはじめ、ラテン、ワールドミュージック、和モノから、旅行記や世界遺産にいたるまで幅広いジャンルで、雑誌、ウェブ、ライナーノーツの執筆、ラジオや機内放送の選曲構成、トークイベント、ライヴハウスのブッキング企画など多岐に渡って活動中。All About「アルゼンチン」ガイド。著書に『ブエノスアイレス 雑貨と文化の旅手帖』『喫茶ロック』最新の著書は『アルゼンチン音楽手帖』(DU BOOKS)。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

キューバ音楽といえば、これまでに何度もブームが起こっている。
さかのぼれば、50年代のマンボだったり、90年代の「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」だったり。そして、サルサやボレロといった、いわゆるラテン的なイメージも根強い。

しかし、ここ10数年の間に出てきた新世代アーティストは、そういった伝統を重んじつつも、新しいキューバの音楽を提案している。
いわゆるラテン音楽と呼ばれるものも多いし、ロック、ジャズ、ファンク、エレクトロニカなどジャンルはバラバラではあるが、欧米の音楽エッセンスを絶妙に取り込みつつも、キューバでしか生まれ得ない独自の音楽に昇華しているのだ。

ここでは、現在進行形のキューバ音楽を知るための10組を紹介しよう。いつまでもおじいちゃんたちが主役ではないということを認識の上、じっくりとご堪能いただきたい。

Yusa「Flash」

最初に新潮流を感じられたのは、ジューサかもしれない。2002年のデビュー作『ジューサ』がヨーロッパで話題になり、日本でもロングセールスを記録。アフロヘアーを振り乱しながら男性顔負けのパフォーマンスと、ファンキーかつコンテンポラリーなリズムにキューバ音楽をミックスした独自のヴォーカル・スタイル。そして、ギターだけでなくマルチ・インスト奏者としても超絶技巧を持った才能もすごい。近年はブエノスアイレスで活動しており、来日公演もしばしば行っている。

Interactivo「Que No Pare El Pare」

ジューサが密接に関わっていたのが、キューバの新潮流を代表するグループ、インテラクティボ。ソロ活動だけでなく、様々なアーティストのプロデュースで気を吐くロベルト・カルカセースを中心に、流動的なメンバー構成で多くのミュージシャンを起用してきた。ベースはファンクやロックだが、ラテン・ジャズやソン、ヒップ・ホップなども巧みに取り入れ、一筋縄ではいかないミクスチャーな世界を構築している。シンガー・ソングライターのフランシス・デル・リオや女性ラッパーのテルマリーなども輩出。

Francis Del Río「Los Amigos」

インテラクティボのメイン・ヴォーカリストとしてフィーチャーされたフランシス・デル・リオは、まさに新世代アーティストの代表といってもいい活躍ぶり。ブルージーな味わいのヴォーカルが、最新のサウンドに乗せてもどこか土臭く感じられるのが魅力だ。この「Los Amigos」も、デジタルな感覚と生々しさがミックスされた独特のサウンド。ジャイルス・ピーターソンにも評価されたこともあって、キューバ音楽ファンだけでなく、クラブ・ミュージック・ファンからも注目されている。

Telmary「Que Equivoca'o」

テルマリーインテラクティボ人脈の重要人物のひとり。キューバには何人か女性ラッパーがいるが、その先駆けでありその後のヒップホップ・シーンに大きな影響を与えている。低めのクールな声で淡々とライムを繰り出す姿は、ラップというよりもポエトリー・リーディングに近い印象。この個性的なスタイルが世界的に受けて、スペインのオホス・デ・ブルッホや、U.F.O.ラファエル・セバーグなど国境やジャンルを超えたミュージシャンからもラブコールを受け、数多くの楽曲にフィーチャーされている。

Orishas「537 C.U.B.A.」

キューバのヒップホップということでいえば、オリーシャスは絶対に外せない。99年に結成され、キューバの民間信仰であるサンテリーアの影響を押し出しながら、スピリチュアルな部分と下世話な雰囲気のバランスで、ワールドワイドに活躍した。惜しくも09年に解散するが、メンバーはそれぞれ独自新たなプロジェクトを立ち上げて活動中。この「537 C.U.B.A.」は、ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブでおなじみ「Chan Chan」をベースにしたキューバらしい代表曲。

Kelvis Ochoa「Sedúceme」

05年に制作された音楽映画『ハバナ・ブルース』は、日本でも公開され少し話題になった。この映画にも出演し、大いに注目を集めたのがケルビス・オチョア。彼もロックやファンクを取り入れたラテン・サウンドとエモーショナルなヴォーカルで人気を得て、自身のバンド、アバナ・アビエルタを率いて積極的なライヴ活動を行っている。最近でもオムニバス映画『セブン・デイズ・イン・ハバナ』にも出演し、再注目を浴びたばかり。ライオンのように髪を振り乱して盛り上がる姿も強烈だ。

Roberto Fonseca「80's」

ジャズ・シーンに目を向けると、これまた面白いミュージシャンがたくさんいる。しかし、頭ひとつ飛び抜けているのが、ピアニストのロベルト・フォンセカだろう。ブエナ・ビスタ系のシンガーのサポートなどで腕を磨いたが、ソロ・アーティストとしても力作アルバムを連発。なかでも最新作の『Yo』(2012年)は、アフロとラテンが絡み合うように融合した最高傑作で、ジャズという枠を取り払いワールド・ミュージックからクラブ・ミュージックまでに対応できる革新的なサウンドを生み出している。

Danay Suárez「Yo Aprendí」

ロベルト・フォンセカも参加したのが、英国のDJジャイルス・ピーターソンによるキューバ音楽プロジェクトのハバナ・カルチューラ。そのなかでひときわ印象に残るシンガーがダナイ・スアレス。プログラミングされたビートに乗せ、シンガー兼ラッパーという両刀使いを武器に、社会派のメッセージも数多く歌っている。テルマリージューサの良さをうまく引き継いでいるが、レゲエ、R&B、ヒップホップなど幅広く、どんなジャンルでも対応可能な力強い歌声で魅了する。

DJoy de Cuba「Deambulando」

同じくハバナ・カルチューラに参加して話題になったひとりが、このジョイバン・ゲバラことディージョイ・デ・クーバ。97年からDJ活動を始めたことで、キューバのレイヴ・カルチャーの第一人者としてテクノ、ハウス、ドラムンベースなどをキューバの音楽シーンに持ち込んだ。実はキューバでは他の中南米諸国に比べるとクラブ・ミュージックのクリエイターが少ないのだが、彼の行う活動はジャズやロックなどと絶妙に絡み合い、キューバ音楽のひとつの未来形を示している。

Mala「Cuba Electronic」

番外編として、マーラによるキューバ音楽へのアプローチも入れておきたい。UKのDJユニット、デジタル・ミスティックズのメンバーであり、ダブ・ステップのクリエイターであるマーラが、ジャイルス・ピーターソンとキューバを訪れて音源を採集し、解体再構築を繰り返して作り上げたアッパーなビート。要素としてはキューバなのに、ラテン的な感情表現をすべてはぎ取り、徹底してクールな作品に仕上げている。本作がキューバに逆輸入されることで、また新たなキューバ音楽が生まれそうだ。

■この筆者「栗本 斉」の関連リンク

HP:http://www.tabi-rhythm.com/
twitter:@tabirhythm
facebook:https://www.facebook.com/tabirhythm
blog:http://blog.livedoor.jp/tabi_rhythm/

■この筆者「栗本 斉」のコラム

読むナビDJ 第79回:知っていると自慢できるアントニオ・カルロス・ジョビンの10曲
読むナビDJ 第77回:誰もが知ってるアントニオ・カルロス・ジョビンの超名曲10選
読むナビDJ 第70回:グスタボ・サンタオラージャの映画音楽作品集10選
読むナビDJ 第64回:エレクトロ・ディスコ界のレジェンド、ジョルジオ・モロダー・ワークス10選
読むナビDJ 第61回:アルゼンチン・タンゴ meets ロック&エレクトロニカ
読むナビDJ 第58回:キューバ音楽の新潮流
読むナビDJ 第43回:アルゼンチン発コンテンポラリー・フォルクローレの世界
読むナビDJ 第42回:静かなる音楽~クワイエット・ミュージックを知る名作10選

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

人気記事

1.2万円のヘッドホン(FOSTEX T50RP)を改造して12万円台の音にする
海外のヘッドホンマニアの間では定番となりつつあるFOSTEX T50RP MOD(改造)を自腹切ってやってみました。良い子は真似... 筆者:編集部K 2014/04/08(火) DrillSpin Picks
第35回:イーグルスだけじゃない、70年代ウエストコースト・ロック・バンド名作10選
多くの人からリクエストがあり、60年末から70年代に活躍したウエストコースト・ロック・バンド10選を特集。初級者にもマ... 筆者:小川真一 2012/06/22(金) 読むナビDJ
第101回:「ロックと日本の60年」第2章 “アイドル”の原型、カバー・ポップス
連載シリーズ第2章は、洋楽曲を日本語で歌うカバーポップス、アイドルと全米No.1を獲得した坂本九「上を向いて歩こう」... 筆者:沢田太陽 2015/05/19(火) コラムスピン
第41回:70年代ファンクここから聴け!ベスト10選
どれも代表曲ばかりですが、やっぱり全部いいね!生演奏モノホンのファンクにズボズボと浸ってください!! 筆者:印南敦史(いんなみ あつし) 2012/09/07(金) 読むナビDJ
第114回:「ロックと日本の60年」第14章 2000年代、世界のシーンは動き、日本は閉じた
日本では90年代の影響がことのほか長く君臨し、00年代とのリンクはどこに?iPodが発売(2001年)、iTunes Music Store(03... 筆者:沢田太陽 2015/08/13(木) コラムスピン

コラム一覧

画像について

Close it

DrillSpin内で表示している人物等の画像は、検索エンジンで画像検索を行ない、その最上位の結果を参照しています。 場合により最適ではない画像が表示されることがあります。

閉じる