コラムスピン :第60回:4月20日、全世界規模のアナログ・レコード祭り開催!!

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第60回:4月20日、全世界規模のアナログ・レコード祭り開催!!

~「レコード・ストア・デイ」で450枚以上のアナログが当日限りの限定リリース~

まもなくその日が来ると思うとワクワクします!限定リリースのアナログを是非、チェックしてみてください!!

この記事の筆者

学生時代は米国オレゴン州で生活。高校でネットラジオ、大学でNapsterを体験、以来オンラインテクノロジー x 音楽コンテンツ x 人の在り方について関心を持つ。海外のデジタル音楽トレンドをテーマに、ソーシャルな音楽サービスや業界の最新動向、デジタルを活用したアーティストのクリエイティブなプロモーション活動事例をいち早く日本で紹介するブログを運営しています。ジャズのアナログレコードから、ネットでの音楽発掘まで、幅広くインディーズ系アーティストを応援しています。

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いま、アナログレコードの人気復興が注目されています。
2012年は世界的に音楽売上が13年ぶりにプラス成長を見せたという音楽業界にとっては嬉しいニュースがありました。デジタルダウンロードや音楽ストリーミングサービスの好調が売上拡大に寄与し、業界全体の復活を促進している中、アナログレコードも同じく成長を維持しています。 ・世界の音楽売り上げ微増13年ぶりに前年上回る
http://www.47news.jp/CN/201302/CN2013022701000901.html
アナログレコードの人気を証明するデータをまずご紹介します。
調査会社ニールセンによる音楽データ調査、Soundscanが発表した2012年音楽業界のデータによれば、米国のアナログレコード売上は2012にまた最高値に到達し、売上枚数460万枚を記録しました。2011年の390万枚から17.7%と2ケタ成長となって、これで5年連続のプラス成長という右肩上がりの好調を維持しています。
下のデータを見てお分かりかと思いますが、2007年に100万枚を突破して以来5年間でその5倍近くに急速に成長しています。


また、世界的に見てもアナログレコードの人気は拡大し続けています。IFPIが発表した2012年のデータによれば、アナログの売上額は1億7700万ドルで、1997年以来の最高売上額に達したとレポートがあります。



なぜ世界的にアナログが人気なのでしょうか。その背景には、音楽を聴くことが好きな一般の若者層リスナーの存在があります。アナログを購入するのは、これまではDJやヒップホップ好き、レアグルーヴのコレクターと一部のコアな音楽ファンだけと思われてきました。しかし、2012年に最も人気のあったレコードを見てみると、ビルボードのアルバムチャートで1位を獲得したジャック・ホワイトの『Blunderbuss』、ザ・ビートルズの『Abbey Road』、グラミー賞最優秀アルバム賞を受賞したマムフォード・アンド・サンズの『Babel』、英国アルバムチャートで1位になったThe XXの『Coexist』などでした。もうお分かりでしょうが、これらは一般的にチャートで上位に入りアワードやライブのメインステージでプレイする、ロック系アーティストのレコードです。これを見るだけでも、アナログがマニアやDJのニッチな世界からメインストリームに認知が広がり、ごく普通の音楽リスナーによるアナログレコードの消費が拡大しているのかが分かります。

僕自身、周囲にアナログレコードを購入し始める人が出始めて驚いています。親しいネット音楽の友人の一人もいよいよCD購入を止め、音楽はデジタルかアナログかのどちらかのフォーマットでの購入に切り替えました。中には、新作発売当日手に入らなくても4枚組みアナログLPを購入したい作品もあるとか。
アナログが人気復活しているのか、その理由とは一体何でしょう?

理由は幾つか考えられますがその一つ、アナログ復活を推進しているモノ、それは「レコード・ストア・デイ」の存在です。

アナログファンの最重要イベント「レコード・ストア・デイ」の魅力

レコード・ストア・デイは、インディペンデントなレコードストアと音楽リスナー、そして音楽をリスペクトしようとの目的で2008年にアメリカで始まった年一度のイベントです。当日は、この日のために制作された限定版アナログレコードやCDパッケージが販売され、ローカルのレコードストアではアーティストやDJによるインストアライブが開催され、アーティストとファンが触れ合う機会が設けられます。2008年の初年度は全米で約300店舗がイベントに参加して開催されました。以来、毎年4月の第3土曜日に世界21ヶ国でレコード・ストア・デイは開催され、6年目の今年は4月20日に開催します。

レコード・ストア・デイの楽しみ方は限定レコードとインストアイベントの二通りがあります。当日は限定アナログLP、7インチ、12インチ、リイシュー、コラボレコードなどジャンルや知名度に制限されず数多くリリースされます。これはレコード・ストア・デイの企画に賛同を示すアーティストやレコード会社の協力によるもので、その数は年々増加しています。今年は450レコード以上の限定リリースが予定されています。
今年は昔のミュージシャンから最近のミュージシャンまで注目度の高いリリースが揃っており、過去最強のラインアップだと思っています。その中からいくつか紹介したいと思います。

まずは新アルバムをリリースしてアーティスト活動を復活させたデヴィッド・ボウイ。新作『The Next Day』から「The Stars」を7インチシングルとして限定リリースします。また1973年のシングル「Drive-In Saturday Night」をピクチャー盤の7インチでリリースします。過去のリイシューから最新のアルバムまでの40年間を振り返るアナログシングルは、ファンだけでなく新しいリスナーもボウイの世界観を体験できる喜びをもたらしてくれるでしょう。


The Stars(Are Out Tonight) /David Bowie


Drive-In Saturday Night/David Bowie



ザ・フレーミング・リップスは1997年にリリースした4枚組みCD『Zaireeka』を4枚組みLPでリリースします。しかしLPにも新しい楽しみ方が盛り込まれています。Zaireekaの4つの各LPには、パートごとに音が分かれて収録されています。つまりアルバムを聴くためには4つのレコードプレーヤーで同時に4つのLPを再生するという、ギミックに仕上がっています。絶対ファンしか買わないレアなパッケージになりそうです。


ZAIREEKA/Flaming Lips



コラボ企画では、ベテランのブライアン・イーノが若干23歳のエレクトロニック音楽プロデューサーのニコラス・ジャーと、バンド、グリズリー・ベアと組んで、限定の「LUX/Sleeping Ute」10インチをリリースします。レコード・ストア・デイの醍醐味の一つには普段見られない組み合わせのアーティストによるコラボ作品が突然発表されたりすることもあるので、ここから知名度の低いアーティストを見つけるキッカケも生まれます。


Brian Eno x Nicolas Jaar x Grizzly Bear



ホワイト・ストライプスジャック・ホワイトは「Elephant」のリリース10周年を記念してリマスターバージョンを2つのカラー盤でリリースします。アナログマスター音源からリマスターされたLPは、1枚は白ディスク、もう一枚はバンドのカラーの赤と黒にカラーリングされた限定ディスクです。Elephantのアナログ盤は今では絶盤となっており、現在でもコレクターの間では需要の高い一枚です。


Elephant(10th Anniversary)/White Strips



その他には、ボブ・ディランが未発表デモ音源「Wigwam 」を7インチでリリースを予定、ポール・ウェラーはこの日のために録音した新曲を含む7インチ5枚組のボックスセットを準備。ジミ・ヘンドリックスダニー・ハサウェイザ・ドアーズも未発表音源を7インチでリリース予定しています。個人的なお薦めは、ジョン・コルトレーンの1961年ニューポート・ジャズ・フェスティバルからの未発表音源と、The XXのプロデューサーJamie XXによるバンドのリエディット12インチが面白そうです。


Wigwam/Bob Dylan


SONIK KICS/Paul Weller




Hey Joe/Jimi Hendrix


Never My Love/Donny Hathaway




Soul Kitchen/The Doors,X


Newport ‘61/John Coltrane




Jamie xx Edits/The XX



4月20日はストア、オンラインストアでこの日にしか手に入らない限定レコードが数多く販売されるので、音楽の魅力を再認識できる機会だと思います。詳しくは下記のリンク先で全てのレコード情報をご覧ください。


Record Store Day 2013 - 4/20/2013

また大都市の有名ストアでは、ファンやカスタマー向けのインストアイベントが開催されます。初年度に参加したメタリカに始まり、これまでフー・ファイターズビースティ・ボーイズなどが参加し、ライブやサイン会を行い音楽好きとコミュニケーションする機会を設けています。またレコード・ストア・デイはローカルのインディーズ・アーティストにも店舗でライブする機会を提供するなど、ローカル音楽シーンの発展にも寄与しています。

例えばロンドンの有名なレコードショップ、「Rough Trade」では今年のブリット・アワード受賞者のトム・オデール、マーキュリー賞にノミネートされたゴーストポエット、そしてダブステップDJのベンガがパフォーマンスを披露する予定です。またニューヨークの「other Music」では、フォー・テットブラック・ダイスサイキック・イルズらインディーズミュージックの人気アーティストがライブを行う予定です。

参加している世界のレコードショップの地図とリストは以下でご覧いただけます。 Find your participating store
http://www.recordstoreday.com/Venues
ここ日本でもレコード・ストア・デイは開催されます。日本ではNPO法人ミュージックソムリエ協会が米国の事務局と提携し、イベントをオーガナイズしています。JET SET RecordsでのトークイベントやライブDJイベントや、マンハッタンレコードでのDJプレイなどが開催されます。詳しくは下記のリンクをご覧ください。 Record Store Day Japan
http://www.recordstoreday.jp/
メディアの注目を集める意味で、今年は元ホワイト・ストライプスで、自身のレーベルThird Man Recordsを運営する、生粋のアナログ好きギタリスト、ジャック・ホワイトがレコード・ストア・デイのアンバサダーを務め、アナログとレコードストアの魅力を訴求していく役割を担います。

再び。なぜアナログレコードは復活しているのか?

最初の質問に戻りたいと思います。なぜアナログレコードが復活しているのでしょうか? それはレコード・ストア・デイの役割、そして注目される理由にヒントがあると思います。それはレコード・ストア・デイの存在価値が、レコードストア、ミュージシャン/レーベル、音楽好きを年に一度ひとつに集めて、「音楽との出会いと接し方」がいかに楽しいかを明確に提示してくれることだと思います。

こんな仮定はできないでしょうか? アナログレコード売上が大きく上昇し始めたのが2007年。iPhoneが発売したのが2007年。App Storeがオープンしたのが2008年。Spotifyがヨーロッパでサービスインしたのが2008年。そしてiPod売上がピークに達したのが2008年。2007-2008年がデジタルとアナログによるリスニングの流れが変化した分岐点だった、と考えられないでしょうか?


(出典:Wikimedia

この時期以降、音楽の視聴は、一般的によりモバイルでよりデジタルによる聴き方への流れが強まります。一方で、iPhoneやスマホ、音楽サービスが登場しても、基本的な音楽の聴き方はiPod時代から続くデジタル音楽データの保存管理のスタイルと変わりありませんでした。利便性が向上した反面、視聴スタイルから差別化要因が失われました。利便性よりも音楽の楽しみ方の本質的な部分、「探す」「発掘する」「接する」ことに新しい価値観を見つけた人たちの答えがアナログレコードだった、と考えられます。

つまりデジタルが普及した昨今で、音楽との出会い方と接し方に新たな選択肢を提供してくれたのが、アナログレコードだったのです。
アナログレコードの復活はデジタル音楽で「新たな価値観を見つける楽しさ」を忘れた音楽好きに対する警告なのかもしれません。

今、周りを見渡してみると、同じスタイルで毎日音楽を聴いている人か、または全く音楽に関心を持たない人のどちらかだと思います。iPhoneやYouTube、まれに月額固定制のサブスクリプション型音楽ストリーミングサービスを利用する人がいるくらいです。これらの音楽サービス・デバイスの中では音楽コンテンツは全て並列化されて消費されます。だから、音楽を探すことや接することへの楽しみ方を自然と忘れてしまっているのかもしれません。

ですが、最近はアナログに同梱されるMP3ダウンロードカードの活用や、Amazonの音楽購入者に無償で音源データを提供する「AutoRip」サービスのアナログ対応、Numero GroupやGet on Downなどリイシュー専門の小規模レーベルが台頭し、パッケージにプレミアムな特典を追加しデラックスボックス化し、ネットで数量限定で販売する流れが増加しています。テクノロジーによって現代のライフスタイルにマッチした音楽体験を実現することがアナログでもデジタルでも可能になりました。この分野は今後もっと多くの音楽好きを巻き込める可能性があり、音楽の聴き方に変化を起こすキッカケになると期待しています。 ・Numero Group(http://www.numerogroup.com
・Get On Down(http://www.getondown.com
ここまでアナログレコードの可能性について述べてきましたが、しかしビジネス的に見た場合、アナログレコードが音楽業界で占めるシェアは未だに低いのが現状です。全体のアルバム売上でわずか1.4%、フィジカルなアルバム売上では2.3%です。つまりどんなにアナログレコードが人気だといっても、音楽業界のビジネスにはわずかな影響しか与えないのです。

でも僕はそれでも構わないと思っています。アナログレコードがリスナーと音楽との出会いと接する楽しみを運んでくれるなら、そのような音楽体験があっても良いと思います。まずは音楽を聴く環境を広める、音楽と接するシーンを育てること、そのためには聴く選択肢を増やすことが最重要課題だと思いますし、異なる選択肢を提供するスマホ、サブスクリプション・サービス、アナログレコードはこれからのデジタル音楽の時代では共存出来る存在だと信じています。

アナログレコードがデジタル世代の音楽視聴にどんな影響を今後与えていくのか、期待しながら先を見守って行きたい、と考えています。

■こちらのまとめも併せてどうぞ!

「レコード・ストア・デイ2013」のアナログ限定リリース・セレクション
park.drillspin.com

2013年4月20日(日本時間では21日)に全世界規模で開催される「レコード・ストア・デイ2013」!今年のアナログ限定リリース・アイテムをピックアップして紹介します。ロック、クラシック・ロック、ヒップホップ、ジャズ、など多岐に渡ります。

■この筆者「Jay Kogami (ジェイ・コウガミ)」の関連リンク

ブログ「All Digital Music」:http://jaykogami.com/
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