読むナビDJ :第90回:新装刊記念!「Light Mellow 和モノ」10選 パート2

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第90回:新装刊記念!「Light Mellow 和モノ」10選 パート2

前回に続きパート2では「00年以降」のセレクション10選。一周、二周してもう一度、”メロウ”再評価後のトラックたち。知らない名前でもとにかく再生。欲しくなるCDがまた増えますよ!

この記事の筆者

音楽&旅ライター。レコード会社勤務の傍らDJ、執筆、「喫茶ロック」企画などで活動。退社後、2年間に渡って中南米を放浪し祭りと音楽を堪能。帰国後は「ラティーナ」誌でのアルゼンチン音楽連載をはじめ、ラテン、ワールドミュージック、和モノから、旅行記や世界遺産にいたるまで幅広いジャンルで、雑誌、ウェブ、ライナーノーツの執筆、ラジオや機内放送の選曲構成、トークイベント、ライヴハウスのブッキング企画など多岐に渡って活動中。All About「アルゼンチン」ガイド。著書に『ブエノスアイレス 雑貨と文化の旅手帖』『喫茶ロック』最新の著書は『アルゼンチン音楽手帖』(DU BOOKS)。

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およそ10年ぶりに復刊された伝説のディスク・ガイド本『Light Mellow 和モノ Special -more 160 items-』。前回はそこで紹介されたアルバムの中から、70年代から90年代にいたるシティ・ポップスを中心にJ-AORやメロウ・グルーヴ・チューンをご紹介しました。今回は、その続編にあたる「ゼロ年代以降のLight Mellow 和モノ」をお届けします。

いわゆるシティ・ポップスは、渋谷系あたりまではちょっとダサいイメージがあったと思います。それが、ゼロ年代に入るとにわかに再評価されることとなりました。そこには、サニーデイ・サービスくるりのようなフォーク・ロック系アーティストが登場した90年代を受けて、70年代のはっぴいえんどガロ周辺の音源が“喫茶ロック”として再評価された動きにもリンクしています。実際、キリンジ冨田ラボあたりからなんとなく70年代のメロウなサウンドにスポットが当たり始め、徐々に土岐麻子ジャンクフジヤマなどがそのシーンを継承していきます。

ここでは、そんな新しいアーティストによる“Light Mellow”な音源を集めてみました。新しいサウンドをお探しの音楽ファンはもちろん、70年代のシティ・ポップスが好きな40代以上の方にもお楽しみ頂けると思います。

冨田ラボ

「ずっと読みかけの夏 (feat. CHEMISTRY)」

キリンジが90年代からゼロ年代への架け橋だとしたら、冨田恵一はその陰の立役者といえるでしょう。MISIAの「Everything」をはじめとするストリングスを駆使したメロウなアレンジは、斬新で懲ったこだわりのサウンドでありながら、既視感のある親しみやすさが特徴です。自身のソロ・プロジェクトである冨田ラボも同様のアレンジをふんだんに取り入れ、ユーミン椎名林檎などビッグ・アーティストが参加することで話題。CHEMISTRYが参加したこの曲も、グルーヴィーなバンド・サウンドと流麗なストリングスのバランスが絶妙な名曲です。



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土岐麻子

「ファンタジア」

最新型シティ・ポップス・シンガーの代表といえば、土岐麻子の名前を挙げる方は少なくないでしょう。元シンバルズとかサックス奏者の土岐英史の娘などといった肩書きもすっかり必要なくなりました。メジャー・デビューとなったアルバム『TALKIN'』(2007年)に収められたこの曲は、アース・ウインド&ファイアーランディ・クロフォードフィリー・ソウルといった様々な要素を取り入れたアレンジに乗せて、せつなく歌うミディアム・バラードの傑作。作編曲を手がけた川口大輔のセンスの良さと、柔らかさとクールさが同居した歌声の魅力に酔わされます。



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高田みち子

「TALEA DREAM」

同世代のミュージシャンと新感覚のシティ・ポップスを作る土岐麻子と対照的なのが、高田みち子です。彼女は、松木恒秀岡沢章渡嘉敷祐一野力奏一というベテラン・ミュージシャン集団のWhat is HIP?をバックに従え、70年代の熱気をそのまま現代に蘇らせるようなサウンドの上で涼しげな声を聞かせてくれます。メジャー・デビュー作『Night buzz』(2004年)に続く2作目『TALEA DREAM』(2005年)のタイトル曲も、まるで佐藤奈々子のようにアンニュイなスロー・ボッサ。現在も継続的にこのメンバーでライヴを行っています。



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ジャンクフジヤマ

「秘密」

ゼロ年代のシティ・ポップス再評価を決定付けたアーティストといえば、やはりジャンクフジヤマではないでしょうか。山下達郎フリークというだけでなく、憑依したかのような声質と歌唱力はインパクト大。瞬く間に話題沸騰し、その後CMソングなどに使われて一般的に認知されるようになりました。この曲は、完全に自主制作で録音したアルバム『A color』(2009年)に収録されていた初期代表曲で、70年代におけるブレイク前のタツローを彷彿とさせます。ここでは、村上“ポンタ”秀一も参加したライヴ・ヴァージョンでお楽しみください。



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quasimode

「SUMMER MADNESS (feat. 横山剣)」

いわゆるクラブ・ジャズといわれる若手ジャズ・シーンのアーティストにも、“Light Mellow”な感覚のものが隠れていたりすることがあります。quasimodeは、ソウルやラテンのエッセンスを取り入れているため、その要素は他のバンドより濃厚かもしれません。ピアノ・トリオにパーカッションという4人編成から叩き出されるタイトなグルーヴに、クレイジーケンバンド横山剣をフィーチャーしたのがこの曲。ホーン・セクションを加えたラテン・ディスコ風のサウンドと、ダンディな歌声に絡み合うエレピの音色がとても爽快に感じられます。



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Lamp

「君が泣くなら」

前述の通り、“喫茶ロック”という70年代フォークロックにスポットを当てたムーヴメントと、“Light Mellow 和モノ”はゆるやかにリンクしているのですが、その両方にまたがるようなアーティストがLampです。男女ツイン・ヴォーカルを要する3人組ユニットで、ソウル、フォーク、ボサノヴァなどを巧妙に取り入れた楽曲とサウンドが魅力。とくにこの曲のように、まるでプログレのようなめくるめくメロディやコード進行が展開するなかで浮遊感溢れるウィスパー・ヴォイスが被さっていき、最終的にメロウな世界に落とし込む手腕には舌を巻きます。



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隼人加織

「もしもし」

“和製ボッサ”なんていう言葉があるほど、60年代以降の日本のポップスにはブラジル音楽からの影響は無視できないものがあります。筒美京平村井邦彦といった作曲家が書いた歌謡曲から、加藤和彦大貫妙子のなどのシティ・ポップスまで、巧妙に日本の風土に溶け込んでいきました。その流れを汲み、究極な作品を作り上げたのが隼人加織かもしれません。ブラジル人とのハーフのシンガーというだけでなく、実際この曲のようにマルコス・ヴァリのカヴァーを本人と録音した本格派ですが、非常に“和”を感じるのが興味深いです。



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流線形と比屋定篤子

「メビウス」

ゼロ年代のアーティストによる“Light Mellow 和モノ”は、いずれもレア・グルーヴやサンプリングの延長線上にあるものが多いですが、さらにその感覚を徹底的に追究したのが流線形です。サウンド・クリエイターのクニモンド瀧口によるユニットは、2003年にミニ・アルバム『CITYMUSIC』の発表以来、音楽マニアから絶大な支持を受けています。比屋定篤子をフィーチャーしたアルバム『ナチュラル・ウーマン』(2009年)も思わずニヤリとする内容で、この曲も大貫妙子が歌うニュー・ソウルのようなメロウ・グルーヴ・チューンの傑作です。



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一十三十一

「DIVE」

流線形のアルバムには謎の美大生・江口ニカというヴォーカリストが参加していましたが、その声とそっくりだといわれていたのが一十三十一(ヒトミトイ)です。いわゆるソウル・ディーバ全盛期の2002年にデビューし、個性的な声とサウンドで他とは違うスタンスで活動してきました。そしてしばらくの休業後、2012年に発表したクニモンド瀧口プロデュースによるアルバム『CITY DIVE』でブレイク。その冒頭を飾るこの曲は、佐藤博の『awakening』に影響されたプログラミングによるグルーヴが、クールでメロウな空間を演出します。



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七尾旅人

「サーカスナイト」

シティ・ポップス的なサウンドが新しいと感じるのは、七尾旅人のような先鋭的なアーティストまでもそのエッセンスを取り入れているからでしょう。ラッパーのやけのはら一十三十一のアルバムにも参加しているDORIANと共演した名曲「Rollin' Rollin'」(2009年)も素晴らしいのですが、震災後の空気感をたっぷり取り入れた社会派アルバム『リトルメロディ』(2012年)にもメロウな感覚が満載。とくにこの曲はギターのカッティングやシンセ・ベースによるゆったりとしたメロウ・グルーヴが、彼の手によって新鮮な世界を構築していきます。



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■関連書籍

◆Light Mellow和モノSpecial ~more 160 items~

著者:金澤寿和 + Light Mellow Attendants
監修:金澤寿和
出版社:ラトルズ
発売日:2013年10月25日
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2004年に刊行されたムック『Light Mellow和モノ669』は、シティ・ポップス・ファンはもちろん、各方面から幅広く注目され、とりわけ和モノDJ諸氏からは“ひとつの重要な座標軸になった"と、高評価を得ていました。
しかし、絶版のため、入手困難状態が長年続いており、中古市場では常に高価格で取引されている定番の人気アイテムです。
今回、監修・著者・編集者はそのままにデザインを一新し刊行する“Special"エディションでは、掲載アイテムの入れ替えナシに、初版の04年以降にリリースされた新作を中心に、新たなる発掘ネタや、近年再評価が進むブギー物など160枚超の新ネタを追加し、結果的に掲載枚数は832枚にもなっています。
ここ1年ほどで、降って湧いたように俄然熱を帯びてきたシティ・ポップス系市場ですが、その手引きとなると同時に、これからのCDの再発状況とも連動しそうな当ガイド。
ここに掲載された“都市生活者のサウンドトラック"の数々が、オトナ世代にとっては忘れかけた遊びゴコロを取り戻すキッカケに、若い層には夢見ることの大切さを知るステップになること、間違いなしです。

■こちらの記事も併せてどうぞ!

読むナビDJ 第88回:新装刊記念!「Light Mellow 和モノ」10選 パート1
Drillspin column

絶版となり今や中古で1万円以上するムック本『Light Mellow和モノ669』が新たに163枚分追加、“Special"エディションとしてめでたくリリース。執筆者の1人、栗本斉さんに10曲ピックアップしていただきました!

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