読むナビDJ :第96回:追悼 ムーンライダーズのダンディ・ドラマー、かしぶち哲郎の名演15選+1

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第96回:追悼 ムーンライダーズのダンディ・ドラマー、かしぶち哲郎の名演15選+1

12月17日に亡くなられたムーンライダーズのドラマー&ヴォーカリストであり作詞・作曲家としても活躍した、かしぶち哲郎さんの追悼特集です。

この記事の筆者

音楽評論家。ミュージック・ペンクラブ・ジャパン会員。ミュージック・マガジン誌、レコード・コレクターズ誌、ギター・マガジン誌などの音楽誌に定期的に寄稿。『木田高介アンソロジー~どこへ』『THE FINAL TAPES はちみつぱいLIVE BOX 1972-1974』『ベルウッド40周年 三浦光紀の仕事』などのCDの解説、共著など多数あり。

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2013年12月17日に、かしぶち哲郎が永眠した。ムーンライダーズのドラマー/ヴォーカリストとして長年に渡り活動しただけでなく、83年からは『リラのホテル』『彼女の時』などの珠玉のようなソロ・アルバムを発表している。

ムーンライダーズの前身となる、はちみつぱい加入時のオーディションで、ドラムを叩くのではなく、ギターの弾き語りを聞かせたというエピソードはあまりにも有名だ。歌心のあるドラマーだけではなく、実際に歌のあるドラマーであり、はちみつぱいの唯一のアルバム『センチメンタル通り』では、「釣り糸」でリード・ヴォーカルを担当している。

作詞・作曲を手がけ、ムーンライダーズとしても数多くの曲を残しているが、石川セリ中原理恵大石恵、そして岡田有希子にも楽曲を提供している。そのほとんどが女性だというのも、かしぶち哲郎らしいところだ。 映画音楽作品も多く、その代表作が西田敏行三國連太郎が主演した<釣りバカ日誌>のシリーズで、6作品を手がけている。他にも、斉藤由貴が主演した『恋する女たち』『「さよなら」の女たち』『君は僕をスキになる』、黒柳徹子原作の『トットチャンネル』、本田昌広監督の『良いおっぱい悪いおっぱい』などにも関わっている。作風は優雅でナイーヴで、日本のジョルジュ・ドルリューと呼びたくなってしまうほどだ。

ドラマーとしても、ヴォーカリストとしても、そして立ち振舞も、実にダンディであった。こんなスタイリッシュなドラマーは、もう二度と現れないと思う。ありがとう、かしぶち哲郎さん。これからも貴方の音楽をずっと聴き続けていきます。心からの追悼の意を込めて、15曲を選ばせていただいた。


かしぶち哲郎

「冬のバラ」

83年に発表した、初めてのソロ・アルバム『リラのホテル』に収録されていた曲だ。全編がヨーロッパ風のノーブルなカラーに染め抜かれている。丹精で耽美で、そのレースのカーテンを思わせるテクスチャーの向こうから、やさしく語りかけるようなヴォーカルが実に印象的だ。




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かしぶち哲郎

「リラのホテル」

83年の『リラのホテル』のタイトルになった曲だ。この曲は元々、ムーンライダーズの面々とともに参加した、あがた森魚の76年のアルバム『日本少年(ヂパングボーイ)』のために書き下ろした曲なのだ。ここでは、83年に矢野顕子とムーンライダーズを招いて、渋谷公会堂でおこなわれたレコ発ライヴでお聞きいただこう。




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かしぶち哲郎

「柔らかいポーズ」

85年にリリースしたセカンド・アルバム『彼女の時』に収められていた。このアルバムは、矢野顕子大貫妙子石川セリという3人の女性たちに囲まれて作られた。まるでセルジュ・ゲンズブールのようなコンセプトの作品なのだが、この「柔らかいポーズ」は、その3人がバック・ヴォーカルで参加している。官能の極致のような艶のある歌声に、惚れ惚れとしてしまう。




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かしぶち哲郎

「Listen to me,Now!」

この曲もかしぶち哲郎らしさに溢れた1曲だ。これを聞いても稀有なメロディー・メイカーであったことが判るはずだ。アルバム『リラのホテル』からの曲であり、共同プロデューサーでもあった矢野顕子がデュエット・ヴォーカルでフィーチャーされている。他にも、坂本龍一細野晴臣白井良明らが参加している。




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かしぶち哲郎

「Deux Ciels~ふたつの空~」

93年の『Fin~めぐり逢い~』は、ロマンティシズムにあふれていて、まるで短編小説を思わせるような作品集であった。それぞれの曲が極上の物語を紡ぎだして行く。このアルバムには、フランス映画界の巨匠ミシェル・ルグランが参加。ストリングアレンジとピアノでかしぶち作品に華を添えている。このコラボレーションは、かしぶち哲郎的な奇跡と言ってもいい。




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かしぶち哲郎

「林檎の木」

ソロ・アーティストかしぶち哲郎は寡作であった。2009年の『Fin~めぐり逢い~』以来、16年振りとなったのが『ル・グラン』だ。ダンディズムに溢れる浪漫主義が凝縮されたアルバムで、クレモンティーヌ石川セリがゲストヴォーカルとして参加している。エロティックなイメージが交差していくが、このような歌詞をさらりと歌いこなしてしまうのが、かしぶち哲郎であった。




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ムーンライダーズ

「S・E・X(個人調査)」

ムーンライダーズのアルバムの中でも、最も実験的であり革新的であり斬新であった84年の『AMATEUR ACADEMY』に収められていた曲だ。ライダーズのデビュー10周年記念のライヴ・ツアーからの映像となるが、ドラムを叩きながら歌うシーンはそれほど残ってなく、これは貴重なものとなるだろう。この映像を含む映像集『The Worst Visualizer』は2014年1月29日にDVD化される。




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ムーンライダーズ

「砂丘」

ムーンライダーズにおける、かしぶち哲郎の位置は「歌うことのできるドラマー」ではなく、「ヴォーカリストがドラムも叩いている」、そんなものであったようにも思う。バンドに楽曲を提供するだけでなく、ヴォーカリストとしてもフィーチャーされる事が多かった。この「砂丘」は、77年に発表された『MOON RIDERS』の最後を飾った曲だ。




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ムーンライダーズ

「Frou Frou」

ムーンライダーズでのライヴの定番曲で、アンコールで演奏されることが多い。85年のアルバム『ANIMAL INDEX』の中では、鈴木慶一のヴォーカルで収録されているが、作詞作曲はかしぶち哲郎。「フル・フル」とはスカートの衣擦れのことで、エロティシズムの極みのような歌詞だ。ここでは珍しいプロモーション・ヴィデオでお聞きいただこう。




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ムーンライダーズ

「6つの来し方行く末」

2009年のアルバム『Tokyo7』のラストに収められていた曲であり、リード・ヴォーカルが鈴木慶一、かしぶち哲郎、武川雅寛白井良明岡田徹鈴木博文と、メンバー全員にバトンタッチされていく。歌詞はそれぞれの誕生月がモチーフになっていて、11月生まれのかしぶちは「コートはおって 悲しみの住居暖めるよ」と切なく歌っている。




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野田幹子

「哀しみのダンス」

87年にCBSソニーからデビューした野田幹子は、ムーンライダーズと関係が深い。ファースト・シングルの「太陽・神様・少年」は鈴木慶一の作曲であったが、89年のアルバム『蒼空の一滴』にはメンバー全員がソングライティングで参加していた。この3rd.シングルとなった「哀しみのダンス」は、かしぶち哲郎の作詞作曲で、フィル・スペクター風味のアレンジの中を、かしぶちメロディーが舞っていく。




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石川セリ

「キ・サ・ラ恋人」

石川セリの84年のアルバム『ファム・ファタル』は意欲的な作品であり、大貫妙子安井かずみ加藤和彦坂本龍一がソングライティングで参加。そして、全曲のアレンジをかしぶち哲郎が担当し、楽曲の多くも手がけている。「キ・サ・ラ恋人」はサントリーのCMにもなった曲であり、かしぶち哲郎らしい哀愁に満ちた旋律が印象的だ。名曲。




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岡田有希子

「花のイマージュ」

86年に岡田有希子の9枚目のシングル曲として発売が予定されていたのだが、彼女の突然の死により幻となってしまった。ファンからの強い要望もあり、後に編集盤の『メモリアルBOX』に収録された。かしぶち哲郎が作詞作曲アレンジを担当し、本来ならば、かしぶちの提供曲の代表作になったであろう名曲だ。かしぶち哲郎は、86年のアルバム『ヴィーナス誕生』でも全編を編曲、楽曲提供もしているので、こちらも要チェック。




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僕らはエレキにしびれてる

「ラブ・ポーションNo.9」

若き日にはセッション・ドラマーとして多くのレコーディングに参加したかしぶちだが、他のアーティストとのセッションでステージに立つことはあまりなかった。その数少ない例外のひとつが、97年の「僕らはエレキにしびれてる」だ。このイヴェントは、ザ・ヴェンチャーズをトリビュートしたもので、Dr.Kこと徳武弘文のバンドに混ざり「ラブ・ポーションNo.9」を演奏している。その嬉しそうなプレイぶりは、ついつい見とれてしまう。

かしぶち哲郎 with 架空楽団

「釣り糸」

架空楽団は、あがた森魚とムーンライダーズだけをカヴァーするというアマチュア・バンドで、これまでにも本家のライダーズや、あがた森魚との共演を果たしている。この映像は99年に渋谷でおこなわれた「ムーンライダーズBAKA!」と名付けられたイヴェントのワン・シーンで、かしぶち哲郎をゲストに招き、はちみつぱい時代の「釣り糸」を一緒に演奏している。これも今となってはレアなショットだ。

セキスイハイム

「セキスイハイム」CM

最後に番外編として、セキスイハイムのCMを。かしぶち哲郎は、数多くのCMを製作しているが、その中でも自身が画面に登場した貴重なものだ。そのダンディな容姿に、ため息をついた女性ファンも多かったのではないだろうか。

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