読むナビDJ :第113回:ハワイアン・スラックキー・ギターの名手10選

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第113回:ハワイアン・スラックキー・ギターの名手10選

以前からやりたかったハワイアン、特に変則チューニングのスラックキー・ギタリストによる名曲・名演のセレクションを新旧取り揃えてお送り致します。

この記事の筆者

音楽&旅ライター。レコード会社勤務の傍らDJ、執筆、「喫茶ロック」企画などで活動。退社後、2年間に渡って中南米を放浪し祭りと音楽を堪能。帰国後は「ラティーナ」誌でのアルゼンチン音楽連載をはじめ、ラテン、ワールドミュージック、和モノから、旅行記や世界遺産にいたるまで幅広いジャンルで、雑誌、ウェブ、ライナーノーツの執筆、ラジオや機内放送の選曲構成、トークイベント、ライヴハウスのブッキング企画など多岐に渡って活動中。All About「アルゼンチン」ガイド。著書に『ブエノスアイレス 雑貨と文化の旅手帖』『喫茶ロック』最新の著書は『アルゼンチン音楽手帖』(DU BOOKS)。

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ハワイアンの楽器といえば、ウクレレやスチールギターがその代表的なものとされてきましたが、ここ20年くらいの間に、スラックキー・ギター(スラッキー・ギターという表記もあり)もよく知られるようになりました。ライ・クーダーを経由してギャビー・パヒヌイが再評価され、ウィンダム・ヒルの看板アーティストであるジョージ・ウィンストンが専門レーベル「ダンシング・キャット」を立ち上げ、日本の第一人者である山内雄喜が認知されるなどいろんな要因があるとは思いますが、なんといってもハワイをたんなるリゾート地というだけでなく、伝統文化にもしっかり目を向けるハワイ愛好家が増えたということが大きいのかも知れません。

さて、そのスラックキー・ギターとは、楽器のことではなく奏法を意味します。通常のチューニングよりも弦をゆるめ、いわゆるオープン・チューニングといわれる特殊な調弦によって特有の音色を奏でるわけです。おもなチューニング方法には、タロパッチ(D-G-D-G-B-D)、C-ワヒネ(C-G-D-G-B-D)、D-ワヒネ(D-A-D-F#-A-C#)などがあり、ギタリストそれぞれが得意な型を使って演奏します。

そもそもこの奏法は、家族や内輪だけで伝えられてきたもので、ほとんど外部に知られることはありませんでした。しかし、1960年代以降ギャビー・パヒヌイが現れてレコーディングするようになると、多くのプレイヤーたちが表舞台に立つようになりました。今では、大規模なスラックキー・ギター・フェスティバルが行われるほど、ハワイ文化の代表的なもののひとつになっています。

スラックキー・ギターは、ある程度完成されたとはいえ、まだまだ発展の余地のある奏法。プレイヤーによって使うギターやチューニングも違うし、様々なジャンルとも融合して発展しています。これからもきっと、新しい感性のミュージシャンが出てくることでしょう。とはいえ、もちろんそこにあるのはハワイ音楽特有のゆったりとした世界であり、癒し系アイランド・ミュージックであるのは事実。難しいことを考えず、心地良い響きに浸ってみてください。

Gabby Pahinui

「Hi'ilawe」

スラックキー・ギターの代名詞といってもいいのが、なんといってもギャビー・パヒヌイ。もともとはスチール・ギター奏者として活動していましたが、1946年にスラックキー・ギターを蔵出しし始めたことで一躍脚光を浴びます。そして、ライ・クーダーとの共演でも世界中に知られるようになりました。惜しくも1980年に逝去しますが、彼の影響力は絶大なまま。この動画は代表曲を12弦ギターで弾き語りした貴重なもの。味わい深いラフな演奏が楽しめます。



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Raymond Kāne

「Ua Noho Au A Kupa」

ギャビー・パヒヌイと同時代に活躍した人間国宝級のひとりが、レイ・カーネことレイモンド・カーネ。カウアイ島に生まれ、漁師の息子として育った彼は、その味わいのある歌声も含め潮の香りに満ちています。もともとスラックキーは演奏していたのですが、大戦後にギャビーのレコードを聴いて影響を受け、50年代から活動を始めます。実際に世に知られるのは80年代以降。ダンシング・キャットに残した『Punahele』(94年)は名盤の誉れ高い一枚です。



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Ledward Kaapana

「Opihi Moe Moe」

カントリーの名ギタリストであるチェット・アトキンスも認めたといわれている天才が、レッドワード・カアパナ。なんと14才からプロとして活動を開始し、83年にソロ・デビューを果たしました。早弾きのウクレレやファルセットを駆使した伸びやかな歌声も魅力的なのですが、なんといってもこの動画で聴かれるような独特のフィンガー・ピッキングこそ彼の醍醐味。超絶技巧のルーツ系ギタリスト、ボブ・ブロッズマンとも傑作共演盤を残しています。



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George Kahumoku Jr.

「Pu'uanahulu」

ギャビーやレイモンド・カーネの次世代を代表するプレイヤーとしてしばしば名を挙げられるのが、ハワイ島出身のジョージ・カフモク・ジュニアでしょう。80年代にはカフモク・ブラザーズとして有名になり、その後はダニエル・ホーなど若手とのコラボレーションも盛んに行っています。また、グラミー賞をはじめとする数々の音楽賞を獲得するなど、間違いなく名実共に現役最高峰。現在はマウイ島で悠々自適の生活を送っているのだとか。



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Keola Beamer

「Ku'u Home O Kahalu'u」

ジョージ・カフモク・ジュニアと同世代の達人といえば、ケオラ・ビーマーも有名なミュージシャンのひとり。彼を世に知らしめたのは、70年代末に弟のカポノ・ビーマーと組んで発表したハワイアンAORの名曲「Honolulu City Lights」。しかし、コンテンポラリーなサウンドを用いながらも、伝統的なスラックキー・ギター奏者としても不動の地位を築きました。歌モノもインストも第一級の心地よさがあり、聴く人を選ばない親しみやすさも魅力です。



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The Peter Moon Band

「Too Far Too Wide」

ケオラ・ビーマー同様にAORファンにも認知が高いアーティストが、ピーター・ムーン。60年代末にギャビー・パヒヌイのセッション・メンバーとして、スラックキー・ギター・シーンの裏舞台を支えました。同時に、伝説のグループといわれるサンディ・マノアの結成に参加し、1979年には自身のバンド、ピーター・ムーン・バンドとしてデビューします。バリバリとソロを弾く一面もあるのですが、やはりソフト・ロック的なナンバーが彼に似合っているような気がします。



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Owana Salazar

「Hi'ilawe - Waterfall」

本場ハワイでも意外に少ない、女性のスラックキー・ギター奏者兼シンガーの代表的なひとりが、オワナ・サラザール。レコード・デビューは1986年ですが、03年の『Wahine Slack ‘n Steel』と05年の『Hula Jazz』がハワイ音楽の権威であるナ・ホク・アワードを受賞し、国外でも評判を呼びました。彼女はスラックキーだけでなく、ラップ・スティールの技も見事。そして、優しい味わいのヴォーカルとともに、女性らしい繊細さで音楽を紡ぎ出しています。



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George Kuo

「Aloha Chant」

ギャビー・パヒヌイとのデュオ作品も残している伝説的なスティールギター・プレイヤーのバーニー・アイザックス。彼の重要な片腕だったのが、1980年にソロ・デビューしたジョージ・クオです。40年代のトラディショナルな奏法に影響を受けた彼の演奏スタイルは、コンテンポラリー派が主流の今では珍しいかもしれません。しかし、ダブルネックのギターで行う鮮やかなコード・チェンジなどからは、単に懐古趣味とはいえない魅力に溢れています。



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Jeff Peterson

「Makawao Chimes」

今ではすっかりベテランの風格が出てきましたが、ジェフ・ピーターソンは新世代の代表として脚光を浴びたプレイヤー。クラシック・ギターを本格的に学び、ジャズなどにも造詣が深いこともあって、そのエッセンスが彼のスタイルの持ち味になっています。エリック・クラプトンアーロン・ネヴィルと共演していることからもその指向性がわかるはず。この曲でもハーモニクスを多用した独自のセンスによって、モダンな印象のスラックキー・ギターを聴くことができます。



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Makana

「Dance Of The Red Poppies」

ジェフ・ピーターソンよりさらに下の世代における実力No.1といえば、マカナの名前が挙がります。14才でプロとして活動を始め、1999年にアルバム『Makana』でデビュー。ロック世代ならではの感覚でハワイアン・ミュージックを解釈し、サンタナエルヴィス・コステロなどのオープニング・アクトにも抜擢されました。この曲は、ハワイ・パシフィック大学のオーケストラとの共演コンサートから。スラックキー・ギターとクラシックの融合が新鮮です。



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Mayuko

「Aloha ’Oe」

ボーナス・トラックとして、日本人プレイヤーのMayukoによる教則ビデオのダイジェスト映像を。もともとクラシック・ギターを勉強し、中学生の頃から数々のコンクールで入賞した実力派。18才でスラックキー・ギターを始め、アルバム・リリースも行っています。もし、この記事を読んで自分も弾いてみたいと思った男性諸氏は、うら若き女性に学んでみると飲み込みも早いはず。というわけで、ぜひトライしてみてください。



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