読むナビDJ :第26回:1980年代ハードコア・パンク10選

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第26回:1980年代ハードコア・パンク10選

ロンドン、ニューヨークに続き、今回は80年代ハードコア!普通の人は知らないバンド多しのコアなセレクションで迫ります。

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1963年2月28日に東京都八王子市で生まれ、1986年からいわゆるライター活動を開始。Hard as a Rockを座右の銘とする音楽文士&パンクの弁護人。『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)、『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)、『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)を発表。

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セックス・ピストルズがリードしたロンドン・パンクのムーヴメントが77年をピークにフェイドアウトした後、メインストリームでは“新しいことを自由にやる”というパンク・アティテュードに則ったニューウェイヴ/ポスト・パンクが広まった。かたやアンダーグラウンドからは、パンク・ロックの荒くれたエナジーをパワーアップさせたバンドたちが続々と出てくる。その一つが労働者階級の心意気を謳ったOi!パンクだが、速く激しい音と政治性を増した歌詞と怒髪天を衝くヴィジュアルでアップデートしたハードコア・パンクも、英国の様々な地方都市から生まれた。

エクスプロイテッド「Fuck The U.S.A.」

“パンクは死んだ”というメディアの妄言に対して80年のファースト・アルバムのタイトル『Punks Not Dead』で中指を立てたのが、北部スコットランドのエジンバラ出身のエクスプロイテッドである。Oi!パンクの無骨なワーキング・クラス・スピリットに裏打ちされた曲だが、この代表曲「USA」収録のセカンド・アルバム『Troops Of Tomorrow』(82年)以降は、メタリックな音で“ケンカ腰サウンド”が増強されている。

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UKハードコア・パンクの中で一番派手なヴィジュアルもポイント。特にワッティー・バカン(vo)のモヒカンは以降の無数のバンドのお手本である。末期ニルヴァーナでギターのスタッフを務めたビッグ・ジョン・ダンカンも、それまでのパンク・バンドにはあまり見られなかった掟破りの巨体でギターを弾いていてカッコイイ。過激に見えてオチャメなところも憎めないバンドなのだ。

ディスチャージ「Never Again/Hear Nothing See Nothing Say Nothing/The Nightmare Continues」

UKハードコアといえばディスチャージ。北欧や日本などのハードコア・パンク勢はもとより、メタリカをはじめとするエクストリーム・メタルへの影響も絶大で、歴史を塗り替えたバンドである。ディスチャージが存在しなかったらパンクだけではなくロックの歴史も違ったものになっていた。歌詞や曲は贅肉をストイックに削ぎ落としてミニマルなスタイルで作られ、シンプルなパンク・ロックの肝を突き詰めた。残念ながら80年代初頭の革命的な時代の映像は見当たらないが、ここではギタリストが変わりつつも全盛期の勢いを残した83年の映像を紹介する。

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代表曲の「Never Again」「Hear Nothing See Nothing Say Nothing」「Nightmare Continue」を連続でやっている。ライヴで一曲ごとにMCを入れていた時期もあるが、こういう息をもつかせずに畳み掛けるプレイでこそ“出口ナシ”で問答無用のディスチャージの本質が表れる。この頃までのディスチャージのアルバムやシングルのジャケットと同じく映像がモノクロで生々しさを増幅しており、しっかりした形でのリリースが待たれる。

GBH「Sick Boy」

ディスチャージの紹介でレコード・デビューしたGBHもUKハードコア・パンクの代表とされるが、いい意味で深刻になりすぎずに音楽を楽しんでいて曲もスピリットも根がロックンロールのバンドである。ギターウルフがライヴでカヴァーした事実も象徴的で、そんなGBHの初期の魅力がこの「Sick Boy」に凝縮されている。

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派手さではエクスプロイテッドと匹敵するが、もっと尖っていてワイルドなヴィジュアルだしタイトな服装もクールだ。ブラック・サバスジューダス・プリーストと同じくバーミンガム出身のバンドの伝統か、メタリックな音も当時のGBHの本領。以降はミディアム・テンポの曲も増えていくが、ランシドティム・アームストロングのレーベルから2010年にリリースした『Perfume And Piss』でも健在ぶりを示している。

ディスオーダー「Life」

英国の初期ハードコア・パンクは、従来のパンク・ロックが加速しただけではなくノイジーになったサウンドも特徴だった。その先駆者がディスオーダーである。ジョイ・ディヴィジョンの曲のタイトルからバンド名を引用しただけにダークな雰囲気も醸し出しているが、リフとか関係なくギター・ノイズで押していく彼らのスタイルは日本ではノイズコアと呼ばれた。今回紹介する「Life」は起伏のある人気曲の一つだ。

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ファッションにも注目したい。特にスコットランドのケルト・スカートっぽいもので下半身を覆っているベーシストの姿は、ぼくも最初に見たときに度肝を抜かれた。ディスオーダーの汚くてボロっぽい服装は、後にクラスト・ファッションと呼ばれるスタイルのルーツとも言える。

カオスUK「No Security」

世界中のどこよりも日本での支持が厚いイギリスのハードコア・パンク・バンドがカオスUKで、特にノイズコアの代表だった初期はジャンルを越えて熱狂的なファンが多い。中でもこの「No Security」はハードコア・パンク屈指の名曲であり、ノイジーなだけでなくヘヴィなサウンドと悲痛なヴォーカルに打ちのめされていただきたい。

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前記のディスオーダーと同じく、フロアー全体を使って様々なファッションの観客と絡むライヴ・パフォーマンスも見どころだ。同時代のUSハードコアのスポーティなノリとは違う“間合い”がUKならでは。ちなみにカオスUKは激しいメンバー・チェンジに伴って音楽性も変わっていき、80年代後半以降はユーモラスで快活なパンク・ロックの方向に進んだ。

ヴァイス・スクワッド「Stand Strong, Stand Proud」

アメリカほど激レアではないが、イギリスでも女性を含むハードコア・パンク・バンドは希少だった。その中でもよく知られているのがヴァイス・スクアッド。パンク雑誌のグラビアを何度も飾ったヴォーカルのベキ・ボンデージはパンク・クイーンとも呼ばれていたが、実際は庶民的なヴィジュアルがチャーム・ポイントだったことがわかる映像を紹介したい。

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もともとハードコア・パンクと言うべき性急な曲が中心だったとはいえ、この「Stand Strong, Stand Proud」と同名タイトルのセカンド・アルバムを出した82年ごろは、見てのとおりハジけている。けどこれがヴァイス・スクアッドのキャラだろう。他にも当時ポップなハードコア・パンク・バンドは活動していたが、ポップといっても70年代のパンク・ロックよりハードな音なのが80年代である。

アメビックス「Largactyl」

以上の3バンドと同じくアメビックスも、ブリストルから80年代前半に頭角を現したユニークなパンク・バンドだ。キリング・ジョークから多大な影響を受けてモーターヘッドを噛ませたような彼らのサウンドは、一般的なイメージのパンクともハードコアとも違うが、つぶれたノイジーな音で後にクラスト・パンクやメタル・クラストと呼ばれるスタイルを生み出した。画質も音質もイマイチだが、ファースト・フル・アルバム『Arise!』(85年)に収録された曲「Largactyl」のこの映像からも、独創性を感じ取れると信じる。

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ファッション的にはクラストの特徴の一つである“非サラサラ系ヘアー”の長髪にも注目。音楽的には90年代以降のアグレッシヴなヘヴィ・ロックへの影響も大きく、ニューロシスマックス・カヴァレラ(元セパルトゥラ、現ソウルフライカヴァレラ・コンスピラシー)もリスペクトを惜しまない。アメビックスはそのソウルフライのオリジナル・ドラマーだったロイ・マヨルガを迎えて再編し、昨年24年ぶりのアルバム『Sonic Mass』で進化した姿を見せつけた。

エクストリーム・ノイズ・テラー「Murder」

ノイジーな音で前述のディスチャージの影響をふくらませてクラスト・コアと呼ばれるスタイルを打ち立てたのが、通称“ENT”のエクストリーム・ノイズ・テラーだ。90年代初頭までの彼らは“極端なノイズ・テロ”というバンド名どおりの音だったが、しっかり練られた曲とツイン・ヴォーカルも特徴でメリハリ十分。初期の代表曲の一つが、86年のカオスUKとのスプリット・アルバムで最初に発表したこの「Murder」である。

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ライヴだと特にノイジーになったバンドでこの映像でもカオス状態だが、それも彼らの持ち味だし、多少ルーズなステージングもENTの音やライフ・スタイルと共振している。ファッション的にもディスチャージを筆頭にした初期のUKハードコア・パンクをアレンジし、音楽同様にクラストの“ボロボロ・テイスト”を混ぜ合わせた服装も影響力が大きい。

ヘレシー「Release」ほか

ENTはUKハードコアの伝統にこだわっていたが、それは80年代半ばのイギリスのシーンに押し寄せていたUSハードコアに反発心を抱いていたからでもある。スポーティなファッションも含めて、USハードコアの洗礼を受けていた当時のイギリスの代表的なハードコア・バンドの一つがヘレシーだ。といっても彼らはアメリカのハードコアの中で最も先鋭的なバンドから触発されていた。ジャンプするステージングもアメリカン・ハードコアっぽい87年の映像を見ていただきたい。

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「Release」という曲をはじめとして短い曲を立て続けにやっているが、とにかく速い。オランダのラームなど既に他の国のいくつかのバンドがこの速さで演奏していたとはいえ、ヘレシーはそういったバンドたちのスピード感を絶妙のセンスでシャープに取り入れ、英国で初めてブラスト・ビートを使ったバンドになる。

ナパーム・デス「Scum/You Suffer」

だがブラスト・ビートを世界的に広めたのは、やはりナパーム・デスである。クラスディスチャージディスオーダーなどのUKパンク/ハードコアに、外国の激速ハードコア・パンクのスピード感や、セルティック・フロストリパルジョンなどのデス・メタルの原型バンドの陰鬱なリフ、米国のスワンズの重さを混ぜて独自のサウンドを作り上げた。そのスタイルを自らグラインド・コアと呼んだが、今も昔もナパーム・デスの基本はハードコア・パンクだ。今回はメインストリームのメディアも注目していた頃の88年前後のライヴで「Scum」「You Suffer」を紹介する。

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後にジョン・ゾーンペインキラーを結成するミック・ハリス(ds、vo)、現カテドラルリー・ドリアン(vo)、当時からカーカスがメイン・バンドだったビル・スティア(g)、現在のバンド・リーダーのシェーン・エンバリー(b)という“役者揃い”のステージ。リーのジャンプとデス・ヴォイスが瑞々しく、メンバー全員がラフな長髪というところにはメタル以前にロックの伝統も感じられる。ちなみに2曲目の「You Suffer」はテレビ番組『トリビアの泉』でも紹介された曲だが、ギネス・ブックにも“世界最短の曲”として記録されている。彼らより早く1秒の曲をやっていたバンドはいくつか存在するが、レコード化したバンドはナパーム・デスが最初だろうから、そういう意味でも革命的なバンドなのだ。

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