読むナビDJ :第27回:ボカロP&ネット音楽クリエーター最前線

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第27回:ボカロP&ネット音楽クリエーター最前線

「VOCALOID曲・再入門講座(前編2007-2008)」「VOCALOID曲・再入門講座(後編2009-2011)」に続き、2012年4月時点での最新VOCALOIDセレクション!

この記事の筆者

Yahoo!ニュース、J-WAVE、MTV81、2.5D、Qetic、ミュージックマガジン、BARFOUT!などで書いたり喋ったり考えたり呑んだりしてます。 著書は『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』〈ダイヤモンド社〉

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「日本では、アークティック・モンキーズリリー・アレンにように、ネット発の音楽ヒットってないよね?」

よく洋楽ロックファンに囁やかれるクリシェであります。しかし、誤解を恐れずにいえば、ロックフェス攻勢以降、閉塞状況を感じる洋楽シーンとは真逆な躍進を広げる国内『ニコニコ動画』シーンでは、100万再生回数を越えるミリオンヒット・ナンバーが続々と誕生しています。そう、『ニコ動』から生まれた“ネット音楽クリエイター”(※ボカロPとも呼ばれる)の活躍が、海外へも誇れる日本発の“ネットヒット現象”として面白いのです。

2012年、国内CD市場は、アメリカを抜いて世界一だと言われつつも、売り上げ規模でいえば全盛期の半分以下まで落ち込んでいます。そんななか、次世代の光明がネット音楽シーン発の“次世代スターの存在”であることは間違いないでしょう。すでに、シーンの先物買いの指標のひとつとなる『JOYSOUND』などカラオケ・ランキングでは、一般的には無名のネット音楽クリエイターによる作品が上位にランクインし、若い世代を中心に男女問わずヒットしています。

従来の新人アーティストと違って、“ネット音楽クリエイター”はCD作品を出す以前に、『ニコ動』コミュニティやSNSを活用することで、マスに頼ること無くファンを拡大していきます。大ヒットの指標としては1曲につき数十万再生回数かつ、ツイッターのフレンドが数万人規模だったりします。そうなれば、CDをリリースした際には数万枚〜数十万枚という売り上げとなることも珍しくありません。インターネット発のメディアであることから、バンドシーンとは異なり、東京&大阪圏に限らず全国各地や海外で同時多発的に盛り上がりをみせることも特徴です。

なかでも気になるのは、独自に進化した生態系における拡散手法である “N次創作”(※マルチホップ的な相互引用・協働創作の連鎖現象)によって共感を集め続ける特異な拡散システムです。ボカロPである作り手や歌い手、ダンサー、絵師などがカバー&リミックスした二次創作作品が多面的に増殖し続けるという、現行の著作権に縛られない文化活動ならではの自由な流れ。人気のある楽曲はカバーされやすい理論ですね。そして、カバーされ続けることで楽曲の魅力が延命するという考え方。それがネットシーンで、息の長いスタンダードナンバーが誕生する理由のひとつでもあります。そんなこともあり、シングル的な位置付けとなる新曲発表は完全にフルストリーミングで、二次創作も可能な状態がデフォルトとなっています。

“ネット音楽クリエーター”は『ニコ動』をファンクラブ的なコミュニティとして、無料で音楽を発表する“場”として活用し、プロもアマも関係なく、同じ条件のもとランキング至上主義という数値的裏付けとともにユーザーに評価されていきます。お金によるパワーゲームが通用しづらい、裏表の無い厳しい世界だったりするのです。

そして、2012年のいま、何よりも注目すべきは作品の音楽的クオリティの高さです。ネット音楽=「萌え系?」など、そんなマイナスイメージをお持ちだとヤケドすることでしょう。いまや、ロックシーンのドープな作品力に劣らない、いや勝るクリエイティブを発揮された作品がたくさんあります。そして、最小人数ですすめられる制作スタイルや制作コストが既存の音楽シーンと全く異なるシステムであることも興味深いのです。

“ネット音楽クリエーター”が、ロックカルチャーへ着実に歩み寄ってきた2012年。これまで主に同人市場のみでの販売だったなか、iTunesやCD作品としても購入しやすくなってきた浸透っぷり。新しさと懐かしさがフュージョンした期待感あふれる、ルールが変わってしまった音楽新世界。何かがはじまりそうな予感がします。そんなナンバーを紹介していきます☆

※「ニコニコ動画」を見るには、登録&ログインが必要です。

米津玄師「ゴーゴー幽霊船」

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米津玄師というアーティストが『ニコ動』ランキング上位を賑わせています。彼はハチ名義で「マトローショカ」など6曲のミリオン再生を達成したボカロP界の英雄でしたが、今年に入ってから本名で、しかも自身によるヴォーカルでロック色の強いアーティスト活動をスタート。アップされた新曲3曲が数十万再生を突破したことで、ボーカロイドのキャラクターに頼らずとも結果を出せることを証明した、2012年の金字塔となる“ネット音楽クリエーター”です。本人はフジロックにも通うロックファンであり、独自の言葉世界を持つ現在21歳。5/16には初の全国流通アルバム『diorama』をリリースされるので要注目! 驚くべき超名盤なのです☆


sasakure.UK「深海のリトルクライ feat. Asako Toki

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ネットから新しいアーティストが続々と誕生しているなか、決定打となるアルバム作品が登場しました。人間とボーカロイドが共存する、たくさんのお伽噺が詰まったコンセプト・アルバム『幻実アイソーポス』。クリエイター、sasakure.UKとは、坂本龍一椎名林檎Radwimpsにも通じるマッドなポップ感を持つ日本を代表するアーティストです。自ら創作した物語をベースに、ジャズ~ポップ~ロック~エレクトロニカを行き交う、情報量の多い独自の音世界を繰り広げる稀代のストーリーテーラー。ヴォーカリストに土岐麻子を起用した本曲「深海のリトルクライ」を聴けば、その類い稀な才能に気づかされることでしょう☆


ナノ×ダルビッシュP「magenta」

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NHK Eテレで放映中のアニメーション『ファイ・ブレイン~神のパズル』のテーマ曲にも起用された、ストレートで疾走感のあるエモいロックナンバー。ナノによるパンチの効いた、伸びる歌声の魅力はもちろん、ダルビッシュPによるスキルフルなギターテクニックにも注目。ONE OK ROCK好きなロックファンにぜひ聴いて貰いたい王道ロック感がクセになる中毒性の高いナンバーです☆


wowaka「ローリンガールfeat. 初音ミク

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いっしょに歌うと気持ちの良い、ひねりの効いたこだわりの歌詞を、ピアノリフが印象的な高速ロックチューンにて高音でまくしたてるように歌うボーカロイド・ナンバー。“N次創作”として派生した動画のヒットも相まって、長く愛され続けているロックチューン。昨年3月に、インターネット発のレーベル『BALLOOM』への参加。5月18日に、BALLOOMレーベル第1弾として、フルアルバム『アンハッピーリフレイン』がリリースされました。


livetune「Tell Your World feat. 初音ミク

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日本が誇るボカロPのオリジネーター、livetune。「Google Chrome」キャンペーンCMソングに抜擢されたナンバー。気鋭のトラックメーカーであるlivetuneの才能が世界で認められたとともに、パソコン用の音声合成ソフト「ボーカロイド」から誕生したディーヴァ、初音ミクのグローバル化を証明する大事件を証明した楽曲。2012年を代表するインターネット讃歌に注目です☆


DECO*27「ゆめゆめ feat. 初音ミク

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2ndアルバム『愛迷エレジー』がオリコン7位を記録、さらに柴咲コウTeddyLoidと結成したエレクトロユニット・galaxias!での活躍でも注目を集める人気ボカロP、DECO*27。そんな彼の新曲は、1年半ぶりに初音ミクをフィーチャーしたナンバー。セガから発売されたニンテンドー3DSソフト『初音ミク and Future Stars Project mirai』のテーマソングとして書き下ろされた楽曲です☆

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2012-12-21 今からでもシーン最先端がわかるボーカロイド曲10選
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2012-04-13 VOCALOID曲・再入門講座(後編2009-2011)
2011-12-16 VOCALOID曲・再入門講座(前編2007-2008)

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