コラムスピン :第116回:「ロックと日本の60年」第15章 2000年代後半~ロックと日本のこれからは?

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第116回:「ロックと日本の60年」第15章 2000年代後半~ロックと日本のこれからは?

長らく続いた連載シリーズも2007年頃から15年までのこれで最終回。CDから配信の時代へと変化し、日本から世界へ進出するチャンスが訪れています!その展望も含めて語り尽くします。

この記事の筆者

1970年生まれ。音楽ジャーナリスト。NHK-FMで「ライブビート」など制作後、1999年よりフリーの音楽ジャーナリスト。2004年、インディ・ロック雑誌「Hard To Explain」を立ち上げ現在も継続中。2010年、ブラジルのサンパウロに移住。ジャーナリスト活動は依然継続中でポルトガル語、英語の翻訳業も展開。海外エンタメの情報ブログ、THE MAINSTREAMは毎日更新中。

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90年代末には英米よりも勢いがあるかのように見えていた日本のロックシーンが、2000年代に入りシーンの流れを捉えそこないから世界に取り残され内向き傾向が強まった。前回はそこまでお話しましたが、最終回の今回は、それから流れが現在どうなっているかについて語っていきましょう。

「配信の時代」に強まったロックの世界的文系化傾向

2007年11月のレディオヘッドのアルバム『イン・レインボウズ』のダウンロード先行発売は、CDよりもネット音源の方が重視される時代を象徴していましたが、もうこの時代になると、なにもかもがウェブ中心の時代となっていました。音楽の情報発信もウェブで当たり前になり、紙媒体の力が弱くなり、洋楽系雑誌では国の内外を問わず廃刊・休刊があいつぎました。

そんな中、欧米のメディアで力を持ったのは、ウェブの批評メディアで、その代表がアメリカのピッチフォーク・メディアでした。熱心な音楽マニアがひたすら作品のレビューを行なうこのサイトは、アメリカならびに世界の熱心な音楽ファンのひとつの指標となり、他媒体の批評にまで影響を及ぼします。その結果、アーケイド・ファイアヴァンパイア・ウィークエンドフリート・フォクシーズボン・イヴェールなどの音楽性の評価の高いアーティストをいち早く紹介し、大物化させました。

アーケイド・ファイア「Ready To Start」

2000年代後半にもなると、これまでヨーロッパや日本のようにロック・フェスの盛んでなかったアメリカで、国の各地でフェスが拡大していく傾向が生まれました。すると、フェスの主催者が選んだのは、ヨーロッパのフェスでヘッドライナーを飾るようなアーティストや、ピッチフォークで話題になるような文化系アーティストで、そこで批評媒体に乗りにくくなったミクスチャーやポップパンク~エモ系のバンドが徐々に締め出されていきました。すると、2000年代の間中、リンキン・パークニッケルバックのようなタイプを猛プッシュし、彼らにとっての生命線になっていたはずのアメリカのロック系ラジオまでもがその傾向にならいフォーマットを変えていきました。

ピッチフォークの台頭は、これまで地方レベルの支持に終わっていたインディのカリスマ的存在を拾い上げるなどの功績はありました。ただ、彼らの批評がこれまでの50年以上のロック史や深く広範なアンダーグラウンドのシーンに精通した上でのものであることは認めるものの、ややもすると若年層やライトユーザーへの親しみ易さがないものを賞賛する傾向があり、それゆえウェブ上での批評だけでは広がりに限界があります。さらにイギリスのNMEのようにスターを作り慣れているわけでもありません。なので、結局、ラジオ受けの良さも兼ねたバンドがスターとなりやすく ガレージ・ロックのブラック・キーズやイギリスの新たなフォーク・ブームから登場したマムフォード&サンズなどがこの恩恵を受け、この傾向はさらに強まっています。

ただ「ラジオで洋楽ロックを聞く」文化が廃れて久しい日本では、活字の反応には早いものの、こうした「音で判断」のバンドに弱いため、ますます欧米とのシーンの格差が開いてしまうことになり「欧米でフェスのヘッドライナーで当たり前のバンドが日本で無名」という状況もかなり増えています。

ウェブ時代の恩恵を受けた女性セレブたち

しかし、ウェブの時代にもっとも恩恵を受けたのはキッズに人気のポップスターでした。なぜなら、欧米の子供たちにしても、下手すれば祖父母の代さえ夢中になり、権威も貫禄も出て来たロックを聞くよりは、YouTubeで話題のポップスターのミュージック・ビデオをチェックしたり、セレブのゴシップをSNSで拾い上げた方が自分たちの世代上、自然なのかもしれません。

こうした流れで最も恩恵を受けたのが、「女の子が共感を持てる同性のスター」で、その最たる例が、レディ・ガガリアーナケイティ・ペリー、そしてテイラー・スウィフトで、彼女たちがシーンの女王のビヨンセに負けずとも劣らない影響力を持っていくことになります。奇抜で悪辣な個性派のガガ、サウンド、ファッション共に先進的なリアーナ、明るいキャラクターで啓発的なメッセージを送るケイティ、カントリー出自の清純イメージから知的で洗練された成長を遂げるテイラー。4者4様の強い個性は、70~80年代のロックスター並の華やかさと言動上での影響力を誇りました。

Taylor Swift「We Are Never Ever Getting Together」

また、こうしたセレブに懐疑的なタイプには、ドラッグ問題のスキャンダルの末に2011年に夭折した破天荒で不世出のエイミー・ワインハウスや、2010年代以降世界最大のアルバム・セールスを誇っているアデルといったイギリスからの両ソウル・ディーヴァのような、うるさ型の音楽マニアをも唸らせることの出来る渋い実力を持った女性が愛され、彼女たちはフォロワーも多く生み出しています。また、それとは真逆に、低年齢層のキッズには、ディズニー・チャンネルの子供スターから軌道を外れて人気のマイリー・サイラス、さらには少女たちの心をくすぐる少年アイドルとしてジャスティン・ビーバーワン・ダイレクションも人気となりました。

Amy Winehouse「Back To Black」

エレクトロDJのスーパースター化とヒップホップの文系化

さらにこの時代の音楽シーンの主役となったのはエレクトロでしたが、世界的ブームにしたのはヒップホップのアーティストでした。きっかけとなったのはカニエ・ウェストが2007年のシングル「Stronger」でダフト・パンクをサンプリングし、2009年にブラック・アイド・ピーズがフランスの人気DJデヴィッド・ゲッタのプロデュースによる「I Gotta Feeling」を世界的に大ヒットさせたことでした。以降、イギリスのカルヴィン・ハリス、アメリカのDeadmau5スクリレックス、スウェーデンのアヴィーチー、ドイツのZeddなど、様々な国のDJがヒットチャートやロックフェスで存在感を示し、影響力の強い存在となりました。彼らの音楽はやがてEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)として2010年代の音楽の顔となります。

このEDMの波に押され90~2000年代にアメリカのヒットチャートを独占したヒップホップは「最も売れる音楽」ではなくなり、特にラッパーのマッチョなアピールが通用しなくなります。すると前述のピッチフォーク・メディアが、インディのロックと並行して、インディで地道に活動していたR&B/ヒップホップ・アーティストの新たな実力や新鮮なサウンドにスポットライトを当てはじめます。その影響でケンドリック・ラマーフランク・オーシャンドレイクザ・ウィークエンドなどが、マッチョさを全面的に誇示しない、よりアーティスティックで繊細なイメージで台頭して来ました。

EDMは2010年代最大のパーティ・ミュージックとして享楽的なブームを呼びましたが、それとは対照的にストイックにエレクトロ・ミュージックの可能性を追求するタイプのアーティストもイギリスのインディから登場し、ジェイムス・ブレイクジェイミーXX率いるバンドTheXXディスクロージャーなどが、反EDM派の支持を獲得します。また、EDMやヒップホップの楽曲でフィーチャリングされるシンガーが声で注目を集める機会も増え、ブルーノ・マーズSiaサム・スミスがチャンスを活かし大物となりました。

洋楽も日本もおびやかしたK-POP

ただ、2000年代後半以降、もしかしたら日本で最も受けいれられた外国の音楽は、従来のような英米のポップスではなく、お隣、韓国のK-POPかもしれません。K-POPは2000年代前半の頃から BoA東方神起が日本でデビューしていましたが、その当時はどちらかというと、日本に修行に来ているような解釈もされていたものでした。ところが2004年に韓国ドラマ「冬のソナタ」が日本で爆発的なヒットとなったのをきっかけに「韓流ドラマ」が日本に大量に紹介されるようになった辺りから、日本人の韓国へのポップ・カルチャーへの見方が変わっていきます。2006年頃には東方神起がオリコン・チャートで1位を獲得するほどの人気となります。

そして、東方神起の事務所、SMエンターテイメントのライバル、YGエンターテイメントがBIG BANGを売り出すと、そのアメリカのR&B/ヒップホップ直輸入のようなサウンドが驚かれることになります。すると、それに刺激を受けたか、SMから少女時代、もうひとつの大手事務所DSPプロのKARA、そしてYGの2NE1といったガールズ・グループが日本をはじめアジア、世界にプロモーションをかけはじめます。彼女たちは日本でも2010年あたりから次々とオリコンのシングル・チャート上でもヒットを飛ばしはじめ、曲のレベルに驚く人や、新種のアイドルとして夢中になる人が続出しました。

さらに2012年には、YGからラッパーのPSYがアメリカ・デビューし「江南スタイル」で、アジア勢としては坂本九の「SUKIYAKI」以来の1位にあと一歩に迫る、ビルボードで7週連続の2位を記録しました。この曲は、欧米圏では、公共の場で突然集団ダンスをはじめる「フラッシュ・モブ」の人気BGMとなり、それがヒットを拡大させることにもなりました。また、同時期にBIG BANG少女時代も積極的なワールドツアーを展開し、アジアはほぼ制覇、欧米圏でもコアな人気ながら熱狂的なファンをつかんでいます。

Big Bang「Loser」

K-POPの成功の裏には、政府がコンテンツに補助金を出すなどの官民一体となった動きがあり、さらに国際的台頭の著しい電機メーカー、サムスンやLGの電気店内でK-POPを流したり、さらに全米進出の際にはビルボードや、時には音楽的に接点があるとも思えないロック系のメディアにまで特集記事を組ませ、テレビの有名エンタメ番組でパフォーマンスをさせるなど、果敢なプロモーションも随分行ないました。それは、「アニメ主題歌がひそかに人気」というあまり意図していなかった成功を受け身に待つだけで、ツアーや媒体露出を計画的に組めない日本のアーティストの海外進出と比べると、国民感情抜きに、意識や姿勢の差を痛感せざるを得ないものはありました。

ロキノン系が日本のロックを制するも・・

一方、日本に目を向けると、ロックに言えるのは、ラウド系が欧米圏でのそれより商業的成功に恵まれていることです。欧米の場合、もはやメタルもオルタナもエモも一緒くたになった“メタルコア”と呼ばれるタイプのシーンもそれなりの規模ですが、前述のようにジャンル外で国際的大型フェスに呼ばれる機会がなく、批評メディアの対象から外され、放送に乗る機会も減りました。さらにやんちゃしたい盛りのキッズをEDMに奪われてもいます。

ただ日本は、リンプ・ビズキットフレッド・ダーストみたく悪ノリ(第14章参照)をしでかした逆風でジャンルごと嫌われるようなことが起きず、後述するタイプのロックフェスから外されることもなかった点で幸運でした。ここからは、80sのメタルから90s以降のラウドロック全般に対応出来る器用さとユーモアのセンスのあったマキシマム・ザ・ホルモンウィーザーが90sのオルタナからポップ・エモへと流れたようなことが結果的にできた BEAT CRUSADERSELLE GARDEN、同じくポップ・エモやリンキン・パークなどからの影響を欧米との時間差を比較的感じさせずに独自に表現できたONE OK ROCKUVERworldMAN WITH A MISSIONなどがオリコンのシングル・チャートの上位にも入る活躍をします。2010年代以降、このジャンルでこうしたチャート結果を残せている国の例は、世界的に見てもかなり稀少です。

ONE OK ROCK「The Beginning」

現在の日本のロックシーンを見た場合、その主流は、前章でも述べたようにBUMP OF CHICKENASIAN KUNG-FU GENERATION以降のバンドでしょう。彼らのような、ROCK IN JAPANフェスティバルやCOUNTDOWN JAPANなどに頻繁に出演しているタイプのバンドはいつしか主催元の「ROCKIN’ON」にちなみ「ロキノン系」と呼ばれるようになっていました。海外で広範に「インディ・ロック」と呼ばれるものが一媒体の呼称で呼ばれるのは独占禁止法的なものを感じないではない(自分たちが呼びはじめたわけではないので問題はないとも思いますが)のですが、それでも「シーン」全体をまとめ、ひとつの勢力に見せたことで存在感をわかりやすくしたことは有意義だったように思います。実際に、ROCKIN’ ON主導、もしくは彼らに刺激を受けた地方のフェスが年々増えたことによって影響力を増し、そこに呼ばれないヴィジュアル系との商業的な立場関係を遂に逆転させました。オルタナティヴ・ロックがヘヴィ・メタルとの立場を逆転させて20年近く立ちましたが、遅ればせながら日本でも同様のことは一応達成されたわけです。

にもかかわらず、この「ロキノン系」のリスナーはしばし揶揄の対象にあげられる傾向もあります。よく指摘されるのは、「鼻にかけてる」「フェスでの格好やライブ中の行動様式が画一的」と言う類いのものです。ロキノン系と呼ばれるリスナーの立場からすれば、彼らは彼らなりに「自分たちの聴いている音楽はavexやヴィジュアル系みたいなものとは違う」という自負が多少なりともあるでしょう。そういう「流行りポップを受動的に聴くことへの反発心」そのものは古今東西、どのロックリスナーもなんらかの形で抱いて来たもので普遍的な心情です。しかし、今日のロキノン系のウィーク・ポイントは、前章でも述べたように洋楽未体験者が多く、かつ、人気バンドの多くが90sの感覚を引きずり過ぎてしまったために、サウンドの感覚やファッション・センスがひと昔前の感覚で止まってしまい、リアルタイムで洋楽を直接聴く人からしてみたら「いつまで、そんな時代を生きてるの?」ということにどうしてもなってしまうことです。昔だったら「歌謡曲派対洋楽派」「J-POP派対外資系CD屋派」みたいな二項対立だったのですが、今日はロキノン系がJ-POP派と洋楽派の挟み撃ちになった状態なのです。

もっとも、2010年代以降は、そうした傾向から、SEKAI NO OWARIサカナクションといった、エレクトロやEDMにアプローチすることで、そうした「20年続いた90年代」を終わらせつつあるバンドも出て来てもいます。そのこと自体は時計の針が進んだことを意味して良いことではあります。ただ、その一方で、「こうすればフェスで盛り上がるから」とばかりに、「4つ打ち」と称して、英米で2004年くらいに流行ったポスト・パンク・リバイバル的なことを2010年代半ばにこぞってやるバンドが目立ってきてもいます。これが増殖しすぎると、一世代前の二の舞になる危険性も十分にあります。

SEKAI NO OWARI「RPG」

アイドルで実験する時代に

それから、2000年代後半から、日本で発展した文化である「アイドル」を媒介として大胆なサウンド・アプローチを展開しようとする動きも出て来ました。こうした発想は、以前からも、たとえば70年代の歌謡曲での作曲家や編曲家の仕事に着目する人や、洋楽でもマドンナ以降のダンス・サウンドに理解を示す人などのあいだでは理解はされていたものでしたが、ロックファン全体の中ではなかなか理解を得にくい考え方でした。

ただ、2007年頃に中田ヤスタカがプロデュースするPerfumeが「エレクトロ・アイドル」としてサブカル的にもてはやされた時期から風向きが変わり、やがて海の向こうからレディ・ガガが現れ、K-POPの女性アイドルが出る頃には、むしろロックに飽き足らない音楽通な人のあいだで「アイドルがクールだ」なる主張をする人が目立つようになってきました。それは、Perfumeに続いて中田がプロデュースしたきゃりーぱみゅぱみゅも然りですが、AKB48以降に大量に登場するようになった女の子グループにも、ももいろクローバーZBABYMETALなどをはじめ、マニアックな音楽性に特化するアイドルも現れるようになりました。これらのアイドルの一部は、海外でアンダーグラウンドに盛り上がるオタク・カルチャーの需要も経て国際展開も行なわれています。こうしたアイドルたちはコアなファン母体も確実に存在するので、現状のままの展開でもある程度は成功すると思います。ただ、それ以上の規模の成功を仮に求めるのなら、日本式の完全に「男目線」で作られた女性アイドル像は、「同性の共感を得てナンボ」な欧米型のソレとは需要が相反するため、そこをどうするかの課題は残されているとは思います。

きゃりーぱみゅぱみゅ「にんじゃりばんばん」

それと同じ頃から、音楽ソフト、ボーカロイドのブームも起き、これも「初音ミク」などのキャラクターに、無名のクリエイターが自由に曲をあてがうことの出来る自由さがウケて、動画を中心にブームが広がりました。ただ、ボカロが10代のカラオケ人気曲を独占するような人気になればなるほどほどJ-POPの使い古しのパターン化されたフレーズが目立つようになるなど、本来のフォーマットの自由さを活かしきれなくなっている面も伺えます。まだ結論を出すには早い段階ですが、独創的な発展を期待したいところです。

現在の洋楽ロックシーンの展望

そして最後に2015年現在でのシーンの展望を、洋楽、邦楽でそれぞれ行なって締めたいと思います。洋楽ですが、ロックの流れで決定的なものは出ていません。体にガツンと来るタイプのロックは、90s以降波なく作品を発表し、シーンに対する抜群の牽引力を持つデイヴ・グロールフー・ファイターズ、彼と蜜月関係にあるクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ(QOTSA)、QOTSAのジョッシュ・ホーミのプロデュース以降、ヘヴィなロックンロール・テイストに移行しイギリスのみならず世界的バンドとなったアークティック・モンキーズが引っ張っている感じです。ただ、その一方で、マムフォード&サンズ以降のエド・シーランからジェイク・バグなどを含むフォークやシンガーソングライター路線、M83テイム・インパラに代表されるエレクトロなサイケデリック・ポップ、The XXアルトJのような知的なUKロックなども目が離せないところです。

中でも最も勢いがあるのはインディ・ロック系の女性アーティストでしょう。フローレンス&ザ・マシーンラナ・デル・レイLordeアラバマ・シェイクスセイント・ヴィンセントHAIMなどは、世界的に内向化し表立った自己主張が控えめの男性ロッカー以上のアピール力とステージでの華があり、世界のロック・フェスの状況さえ変えうるポテンシャルがあります。

ただ、そうした状況が、洋楽雑誌の廃刊続きやロキノン系バンドの内部でさえ進んでいる洋楽離れなどが起こっている中、日本でしっかり伝わっているかは「?」です。こうした流れを日本のフェスが今後どうフォローできるか、また、欧米で一般化し、とりわけ洋楽曲のコンテンツに強みを見せるストリーミング・サービスが日本で普及した際どうなるか。今後の見ものです。

Florence & The Machine「Ship To Wreck」

現在の邦楽ロックシーンの展望

一方、日本ですが、前述のロキノン系は問題こそ孕んではいますが、ただ、若いバンドがそれなりの層となってコンスタントにシーンに生まれていくこと自体は、世界的に見てロックの存在感自体が地味になりつつある状況では評価できることではあります。あとは現在よりも広い視野に立って作られた音楽をリスナーに対してどう刺激的に与えることが出来るかでしょう。

ただ、最近はONE OK ROCK[Alexandros]のように、日本のシーンで既に商業的に成功している若いバンドの口から海外進出の夢が物怖じしないで語られはじめていたりもしています。また、2000年代半ば以降復活した安室奈美恵、そして三浦大知のように、アメリカでの最新のサウンドを強く意識し、本格的なエンターティナーを目指し実践している人も出て来ています。

さらに、cerotofubeatsのように、ネット世代本来の恩恵を活かして深く広い音楽の造詣を得た世代が、ようやく「これからの日本のサウンド」を作りはじめ、注目を集めはじめています。彼らの他にも、まだインディ規模ではありますが、同じような姿勢のアーティストが増えはじめ、サウンドではなく精神的な意味で90sの渋谷系の頃のような状況も芽生えつつあります。こうした新しい可能性が次の10年でどうなるのかにも注目したいところです。

cero「Orphans」

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