読むナビDJ :第159回:追悼・偉大なるバンジョー/ペダル・スティール奏者、ビル・キースの名演12選

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第159回:追悼・偉大なるバンジョー/ペダル・スティール奏者、ビル・キースの名演12選

最近では「アメリカーナ」と呼ばれるカントリー、フォーク、ブルーグラスの世界では、バンジョー/ペダル・スティール・ギター奏者の追悼特集。ホール&オーツ、ジェフ&マリア・マルダーとのセッションを含む12選です。

この記事の筆者

ミュージック・ペンクラブ・ジャパン会員。ミュージック・マガジン誌、レコード・コレクターズ誌、ギター・マガジン誌などの音楽誌に定期的に寄稿。『木田高介アンソロジー~どこへ』『THE FINAL TAPES はちみつぱいLIVE BOX 1972-1974』『ベルウッド40周年 三浦光紀の仕事』などのCDの解説、共著など多数あり。

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まさに<バンジョー・マン>という名前に相応しい男ビル・キースが、2015年の10月23日にこの世を去った。ブルーグラス界の大御所、ビル・モンローブルーグラス・ボーイズ出身という輝かしき経歴をもっているが、ブルーグラスの世界に止まらず幅の広い活動をした。ざっくりとそのキャリアがを眺めてみても、ブルーグラス・ボーイズ脱退後には、ジム・クウェスキンのジャグ・バンドに正式メンバーとして加わり、その後も、盟友でもあったジム・ルーニーと組んだブルー・ヴェルヴェット・バンド、サイケ・カントリーの先駆であったアース・オペラなどに在籍した。

バンジョーの世界では<キース・チューナー>という装置を開発した。これはバンジョーのネックに装着して、瞬時にチューニングを変えるペグ(装置)だ。変則チューニングのためというよりも、演奏中に音程を変えメロディーを弾くことに用いられることが多い。その使用方法は下記のリンクのマーク・パットンとの演奏をみてもらえば分かるだろう。

ビル・キースはまたペダル・スティール・ギターの名手でもあった。スティール・ギターはバンジョーとおなじくカントリー・ミュージック系の音楽で使われる楽器なのだが、ピアノとサックスほどの違いがある。唯一共通しているのは、サム・ピック(指先につける金属製のピック)を使うことくらいだ。ペダル・スティールでは、ホール&オーツからスティーヴ・グッドマンまで、バンジョー以上にヴァラエティにとんだ活躍をした。

ビル・キースの功績のひとつが、ブルーグラス界に新風を吹き込んだことだ。当時は<ニュー・グラス>という言い方もされたのだが、ロング・ヘアーの若い世代によるブルー・グラスを築きあげた。その代表が、ピーター・ローワンデヴィッド・グリスマンリチャード・グリーンらと組んだミュールスキナーだ。まさに70年代ブルーグラスの金字塔。このセッションに参加したクラレンス・ホワイトも、もうこの世にはいない。

ビル・キース&ジム・ルーニー

Bill Keith & Jim Rooney「Devil's Dream (1963)」


マサチューセッツ州ボストン出身のビル・キースが最初に組んだのが、盟友ともいえるギタリストのジム・ルーニーとのデュオだ。マンドリンにはジョー・ヴァルが、ベースにはジム・クウェスキン・バンドフリッツ・リッチモンドが参加している。東海岸のブルーグラス・シーンでは、先駆的なグループであった。

ビル・モンロー&ヒズ・ブルーグラス・ボーイズ

Bill Monroe and his Bluegrass Boys「Santa Claus (1965)」


ビル・キースは1963年にビル・モンローブルーグラス・ボーイズに加入する。この名門ブルーグラス・バンドは学校のような存在であり、ピーター・ローワンリチャード・グリーンバイロン・バーラインヴァッサー・クレメンツなど、次世代を担うブルーグラッサーが数多く育っている。ビルの在籍期間はそれほど長くはないのだが、ビル・モンローは彼のバンジョーをとても評価していたという。



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ジェフ・マルダー&マリア・マルダー

Geoff & Maria Muldaur「Brazil (1968)」


ジム・クウェスキンのジャグ・バンドを抜けたジェフ・マルダーは、妻であったマリア・マルダーとともにデュオ・チームを結成する。このグループは、アメリカのルーツ・ミュージックをロック的に解釈した名演を数多く残した。この「ブラジル」は、テリー・ギリアム監督の映画『未来世紀ブラジル』の中で、主題歌のように使われている。



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ブルー・ヴェルヴェット・バンド

The Blue Velvet Band「Sweet Moment (1969)」


ビル・キースが、盟友のジム・ルーニー、元ブルース・プロジェクトアンディ・カルバーグエリック・ワイズバーグリチャード・グリーンらと組んだブルー・ヴェルヴェット・バンドは、東海岸派カントリー・ロックの開祖として再評価されてもいいバンドだ。ビルはここでは、バンジョーとペダル・スティールの両方を弾いている。



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アース・オペラ

Earth Opera「Home to You (1969)」


アース・オペラは、ピーター・ローワンデヴィッド・グリスマンが中心となって結成された。活動時期はブルー・ヴェルヴェット・バンドとも重なるのだが、アース・オペラのほうがロック的であり、サイケデリックなアプローチが取られている。ピーター・ローワンビル・モンローブルーグラス・ボーイズにも加わっていたことのあるヴォーカリストで、その後もザ・ローワンズなどを率いていた。



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カレン・ダルトン

Karen Dalton「When A Man Loves A Woman (1971)」


カルトなシンガーとして人気のあるカレン・ダルトンの71年のアルバム『In My Own Time』。エイモス・ギャレットジョン・ホールジョン・サイモンが参加しベアズビル・スタジオで録音されたウッド・ストック・アルバムだ。パーシー・スレッジでお馴染みのソウル・ナンバー「男が女を愛するとき」のディープなフォーク解釈が素晴らしい。



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ダリル・ホール&ジョン・オーツ

Daryl Hall & John Oates「Southeast City Window (1972)」


ダリル・ホール&ジョン・オーツの72年のデビュー・アルバムにも、ビル・キースは参加している。ホール&オーツは、ザ・テンプトーンズやガリヴァーで活躍していたダリル・ホールが、大学の同級生であったジョン・オーツとともに結成したグループだ。初期でまだブルー・アイド・ソウル色は薄いのだが、そこがまた初々しい。



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スティーヴ・グッドマン

Steve Goodman「Don't Do Me Any Favors Anymore (1972)


スティーヴ・グッドマンはシカゴ生まれのシンガー・ソングライター。クリス・クリストファーソンに見初められ、彼のプロデュースにより72年にデビューした。アーロ・ガスリーが歌いヒットした「シティ・オブ・ニューオーリンズ」の原作者であり、他にも数多くの名曲を世に送り出した。このデビュー作には他に、デヴィッド・ブロムバーグなども参加している。



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ミュールスキナー

Muleskinner Live「Original Television Broadcast (1973)」


ビル・キース、ピーター・ローワンデヴィッド・グリスマンリチャード・グリーン、それにクラレンス・ホワイトが一堂に会したブルーグラス界のスーパー・セッション。映像をみていただければ分かるが、長髪でロック然としたミュージシャンが集まっている。演奏もロック的な雰囲気が満載で、実にエキサイティングだ。



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ビル・キース/ジム・コリアー

Bill Keith / Jim Collier「Smoke Smoke Smoke (1979)」


ジム・コリアーはノースカロライナ州出身のギタリスト/マンドリニスト/ヴォーカリストで、現在はレッド・スクワール・チェイサーズを率いて活動している。詳しい経歴などは分からないのだが、このビル・キースとのこのアルバムが、プロとしては唯一のものとなる。スウィング・チューンあり正統派ブルーグラスありの、なかなか楽しい作品だ。



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ビル・キース/マーク・パットン

Bill Keith & Mark Patton「Auld Lang Syne (2010)」


2010年にウッドストックで開かれたギター・ショウに出演した際の演奏だ。曲は日本では「蛍の光」として知られている「オールド・ラング・サイン」。曲の途中でネックのあたりを触っているが、これが<キース・チューナー>なのだ。巧みに音程を変えながらメロディを奏でている。イントロの部分も、ビル・キースらしいメロディックな弾き方をしているところにも注目。

ジム・クウェスキン・ジャグ・バンド

Jim Kweskin Jug Band「Caravan (2013)」


2013年にビル・キースは、ジム・クウェスキン・ジャグ・バンド/リユニオンの一員として、マリア・マルダージェフ・マルダーらとともに来日した。この映像は日本公演とほぼ同時期のもの。ジム・クウェスキンの「Great Bill Keith!!」の紹介に続き、デューク・エリントンの「キャラバン」を演奏する。かなり難しいフレーズが連発しているのだが、それを飄々と弾きこなしている。



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ビル・キース、バンジョーとビル・モンローを語る

Bill Keith talks about the banjo and Bill Monroe


ボーナスとして、ビル・キースがビル・モンローとの思い出、そしてバンジョーについて語った映像を。途中でトニー・トリシュカとのバンジョー二重奏のライヴ・シーンが挿入される。

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