読むナビDJ :第161回:追悼・ニューオーリンズが生んだ偉大なる作曲家アラン・トゥーサンの名演15選

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第161回:追悼・ニューオーリンズが生んだ偉大なる作曲家アラン・トゥーサンの名演15選

ニューオーリンズ・ミュージックの外交官的な役目を担い、ロックやソウルをプロデュースした作曲家の(ホントはもっと入れたい)15選。

この記事の筆者

ミュージック・ペンクラブ・ジャパン会員。ミュージック・マガジン誌、レコード・コレクターズ誌、ギター・マガジン誌などの音楽誌に定期的に寄稿。『木田高介アンソロジー~どこへ』『THE FINAL TAPES はちみつぱいLIVE BOX 1972-1974』『ベルウッド40周年 三浦光紀の仕事』などのCDの解説、共著など多数あり。

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ニューオーリンズが生んだ偉大なる作曲家であり、ピアニストでありヴォーカリストでプロデューサーでもあったアラン・トゥーサンが、2015年の11月10日に亡くなった。スペインをツアー中に、そのライヴの直後に心臓発作を起こしたと言うが、最後の最後まで現役のミュージシャンであった。

1938年にニューオーリンズで生まれ、ファッツ・ドミノデイヴ・バーソロミュー関連のセッションに参加し頭角を現していく。60年に入ってからは作曲家としての才能を目覚めさせ、ローリング・ストーンズもカヴァーした「フォーチュン・テラー」や、「ペイン・イン・マイ・ハート」の原曲である「ルーラー・オヴ・マイ・ハート」、他にもニューオーリンズ・ヒットでいえば、アーニー・K・ドゥ「マザー・イン・ロー」、リー・ドーシー「ライド・ユア・ポニー」、スリー・ドッグ・ナイトのヴァージョンでヒットした「プレイ・サムシング・スウィート(ブリックヤード・ブルース)」など数多くのヒットを生み落としている。オバマ大統領の選挙の時に話題となった「イエス、ウィ・キャン」(オリジナルはリー・ドーシーで、73年にザ・ポインター・シスターズのヴァージョンで大ヒット)も、アラン・トゥーサンの作品であるのだ。

ロックの世界でアラン・トゥーサンの名前が取り沙汰されるようになったのは、ザ・バンドの『カフーツ』のブラス・アレンジメントを担当してからだ。その後は、ポール・サイモンの『ひとりごと(There Goes Rhymin' Simon)』や、ポール・マッカートニー&ウイングス『ヴィーナス・アンド・マース』などにアレンジャーとして参加した。それだけでなく、自らのスタジオにブロウニング・ブライアントフランキー・ミラージェス・ローデンロバート・パーマーなどを招き、南部色の強いアルバムを制作した。

ロック・フィールドとの共演はその後の続くのだが、最も驚かされたのは2006年のエルヴィス・コステロとの共演盤だ。どちらが主役というわけではなく、互いの敬愛が作品に結集した素晴らしいアルバムに仕上がっている。また2009年には、ジョー・ヘンリーのプロデュースによるアルバム『ブライト・ミシシッピー』を残している。

アラン・トゥーサン

Allen Toussaint「Southern Nights」


ジェントルでエレガント、これがアラン・トゥーサンの音楽だ。75年に発表された彼の同名のソロ・アルバムからの1曲。94年に豊橋でおこなわれた「ライヴ・セレブレーション '94」の時に間近で会ったのだが、実に物静かで南部紳士然としていた。真夏の暑い日だったのだが、三つ揃いのお洒落なスーツでめかし込んでいたのが印象に残っている。



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ポール・マッカートニー&ウイングス

Paul McCartney and Wings「Venus And Mars/Rock Show」


ポール・マッカートニーウイングスは、75年に『ヴィーナス&マース』のレコーディングのためにニューオーリンズに訪れている。スタジオとして使われたのは、アラン・トゥーサンが所有するシー・セイント・スタジオで、トゥーサン自身も「Rock Show」でピアニストとして参加した。米国ビルボード誌のサイトには、今回のアラン・トゥーサンの死に際してのポール・マッカートニーからの弔辞が掲載されている。



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ポール・サイモン

Paul Simon「Tenderness」


73年にアラン・トゥーサンはポール・サイモンのアルバム『ひとりごと(There Goes Rhymin’ Simon)』に参加する。このアルバムにはニューオーリンズにちなんだ「夢のマルディグラ(Take Me To The Mardi Gras)」が収められているが、こちらではなく「君のやさしさ(Tenderness)」でのアレンジを担当した。ディキシー・ハミングバーズの重厚なコーラスを背景に、トゥーサンのブラス・アレンジが鳴り響いていく。



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ラベル

LaBelle「Lady Marmalade」


パティ・ラベルを中心に、サラ・ダッシュノナ・ヘンドリックスの3人で結成したのがラベルだ。74年にリリースした「レディ・マーマレード」は、アラン・トゥーサンがプロデュースし、バックにはザ・ミーターズが付くという強力な布陣で制作された。このキャッチーでファンキーな曲は全米チャートの第1位に輝いている。人気の高い曲で、その後もいくつかのカヴァー・ヒットが生まれている。



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ザ・ポインター・シスターズ

The Pointer Sisters「Yes We Can, Can」


オバマ氏が大統領に出馬したときに話題となったのが、この曲「イエス、ウィ・キャン」だった。元々はニューオーリンズ出身のリー・ドーシーのアルバムのために書き下ろした曲だったのだが、その後、73年にザ・ポインター・シスターズがカヴァーし大ヒット、全米チャートの第11位にランクインした。ラベルの「レディ・マーマレード」もそうなのだが、この時代のアラン・トゥーサンはヒット作を連発していたのだ。



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エリック・ゲイル

Eric Gale「Touch Of Silk」


フュージョンとアラン・トゥーサンというのは意外な組み合わせであるが、エリック・ゲイルの80年の録音に、トゥーサンが参加している。アルバムの中でキーボードを演奏するだけでなく、プロデュース役もかって出ている。なおアラン・トゥーサンは、タイトル・トラックの「タッチ・オブ・シルク」以外にも、4曲を書き下ろしている。



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ジョー・コッカー

Joe Cocker「Fun Time」


78年にアサイラム・レコードから発売されたジョー・コッカーのアルバムは、参加メンバーが豪華で、コーネル・デュプリーピート・カーチャック・レイニーデヴィッド・フッドなどがレコーディングに加わっている。アラン・トゥーサンは、ホーンとストリングスのアレンジ、それにプロデュースで関わっている。そしてこの「ファン・タイム」はトゥーサンの曲でもある。



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ブロウニング・ブライアント

Browning Bryant「You Might Say」


ブロウニング・ブライアントは少年シンガーとして人気を博していたのだが、アラン・トゥーサンに見初められアルバムを制作する。この「ユー・マイト・セイ」もトゥーサンの作品で、彼らしい円やかな旋律を持ってる。どのようにして出会ったのかは不明なのだが、見事なスワンプ/ブルー・アイド・ソウルなアルバムに仕上がっている。



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フランキー・ミラー

Frankie Miller「Play Something Sweet (Brickyard Blues)」


70年代にはブロウニング・ブライアントジェス・ローデンロバート・パーマーマイロン・ルフェーヴルなどがニューオーリンズのアラン・トゥーサンのもとを訪れアルバムを制作している。これは<ニューオーリンズ詣で>とも呼ばれた現象なのだが、このフランキー・ミラーのアルバムもそんな1枚。両者の相性は良く、南部色の濃い素晴らしい作品となった。



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ボニー・レイット/アラン・トゥーサン

Bonnie Raitt / Allen Toussaint「What Is Success」


ボニー・レイットは、74年のアルバム『ストリートライツ』の中でアラン・トゥーサン作の「ホワット・イズ・サクセス」を取り上げていた。この2006年ニューオーリンズでのライヴは、その作者と歌手との共演となる。トゥーサンの転がるようなピアノをバックに、ボニー・レイットのスライドが空高く駆け上っていく。



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アラン・トゥーサン

Alan Toussaint「What Do You Want the Girl to Do」


アラン・トゥーサンの「ホワット・ドゥ・ユー・ ウォント・ザ・ガール・トゥ・ドゥ」は「あの娘に何をさせたいんだ」の邦題があり、ボズ・スキャッグスローウェル・ジョージ、それにジェフ・マルダーなどがカヴァーしている名曲。その作者によるセルフ・カヴァー。エタ・ジェームスの敬愛に満ちた紹介に乗って始まる。



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エルヴィス・コステロ/アラン・トゥーサン

Elvis Costello, Allen Toussaint「Who's Gonna Help Brother Get Further」


このエルヴィス・コステロとアラン・トゥーサンのセッションも、ハリケーン・カトリーナがらみで、ベネフィット・コンサートで共演した二人が意気投合してアルバムの制作に至った。コステロとトゥーサンの曲が持ち寄られたのだが、この「フーズ・ゴナ・ヘルプ・ブラザー・ゲット・ファーザー」はリー・ドーシーに書いたものを再アレンジした曲。



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アラン・トゥーサン

Allen Toussaint「Life Is a Carnival」


ザ・バンドは71年のアルバム『カフーツ』でアラン・トゥーサンを指名し、ホーン・アレンジントを依頼した。「ライフ・イズ・ア・カーニバル」はトゥーサンの参加抜きには出来上がらなかったと思う。この映像は、ザ・バンドのドラマーであったレヴォン・ヘルムをベネフィットしたもので、トゥーサン自身が「ライフ・イズ・ア・カーニバル」を歌うという貴重なライヴ・シーンだ。



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アラン・トゥーサン

Allen Toussaint & Friends


アラン・トゥーサンは、アーマ・トーマスアーニー・K・ドゥジェシー・ヒルアール・キングなどのニューオーリンズ出身のミュージシャンを世に送り出した。その門下生ともいえるミュージシャンを一堂に集めた92年のライヴ。繰り広げられる名曲の数々、これは見応えがある。



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アラン・トゥーサン

Allen Toussaint at Crescent City Blues & BBQ Festival


2015年の10月におこなわれたニューオーリンズのBBQフェスでのライヴ映像だ。バックをつとめるのはアート・ネヴィルを中心にジョージ・ポーターJr.ブライアン・ストルツらが参加しているザ・ファンキー・ミーターズ。少し前まで、こんなにも元気に演奏していたかと思うと、あらためて涙が出てきてしまう。R.I.P.



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アラン・トゥーサン

Allen Toussaint Documentary


ボーナス・トラックとして、BBCが制作したドキュメンタリー番組を。ニューオーリンズの美しい町並みが映し出されたり、ファッツ・ドミノの映像が映し出され、その後でファッツのフレーズをピアノで弾くシーンがあったり、貴重な映像の連続だ。エルヴィス・コステロポール・サイモンも登場してきている。

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