読むナビDJ :第30回:ジャズ・ドラマーのブラシ・プレイ、おススメ曲&映像10選

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第30回:ジャズ・ドラマーのブラシ・プレイ、おススメ曲&映像10選

バラードで、スティックからブラシに持ち替える。これぞ「ジャズ」!! ちょいマニアックですが、ジャズドラマー「ブラシの達人」オススメ曲と映像10選

この記事の筆者

ジャズ・ライター。ジャズ専門誌、エンターテインメント雑誌の編集者を経て、1995年頃からフリーランスとして活動。

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ジャズ・ドラムの奏法のひとつにスティックの替わりに「ブラシ」を使う演奏がある。他のジャンルではあまり見かけないように思われるが、ジャズ・ドラムでは必須である。ブラシの演奏には繊細さとテクニックが必要とされる。それがなければ演奏全体を台無しにしかねない。ブラシがうまければ、一流のジャズ・ドラマーといえるのではないだろうか。 ブラシはスロー・ナンバーの場合は打面を円を描くようにこすりながら演奏する。軽快なテンポではスインギーに素速く叩く。ミュージシャンに個性があるようにブラシ演奏もさまざまである。エド・シグペンのように至芸といわれる域に達したり、エルヴィン・ジョーンズのようにアグレッシブに演奏したりする人もいるのだ。

Jo Jones

ジョー・ジョーンズはスイング・ジャズ時代を代表するドラマー。カウント・ベイシー楽団で活躍した。彼がタイムキープの役割をバスドラからハイハットに移行させたり、ブラシ奏法を革新して積極的に使うようになった。

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ベイシー楽団の朋友レスター・ヤング(ts)とテディ・ウィルソン(p)が共演したアルバム『Prez and Teddy』(Verve)の「Louise」では、ジョー・ジョーンズがブラシ・ソロを披露する。そのほかの収録曲「Prisoner of Love」「Taking A Chance on Love」などでもスマートなブラシ演奏を聴かせている。

映像はアップテンポのジャム・セッションで優れたブラシ・テクニックをみせる貴重な記録だ。

Max Roach

マックス・ローチはモダン・ジャズ・ドラムの確立に貢献した一人。ブラシの名手でもあるわけだが、ピアノのバド・パウエルのレコーディングでは主にブラシで演奏しているから興味深い。パウエルはドラマーにブラシ・プレイを要求した。パウエルはスピーディーな超絶技を得意としたので、ドラマーに自由にアクセントを入れられると集中しにくかったのではないだろうか。

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パウエルはモダン・ジャズ・ピアノの創始者。衝撃を与えた初リーダー作『Bud Powell Trio』(邦題『バド・パウエルの芸術』)(Roost)はローチがブラシの名演をみせた作品でもある。中でも、高速のピアノ演奏にブラシでついて行く「Indiana」は聴きものである。

映像はベテランになったローチがドラム・クリニックで披露したブラシ演奏だ。

Art Blakey

アート・ブレイキーはナイアガラ瀑布に例えられるドラムロールをはじめ豪快なドラミングやアフロ系のポリリズムで知られる。ブラシを得意にしたという印象はあまりないが、このジャズの巨人は外せない。彼はアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズを率いて、30年以上にわたり王道ジャズのド真ん中を闊歩した。

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ブレイキーのブラシの代表的な名演が聴けるのは、キャノンボール・アダレイのアルバム『Somethin' Else』(Blue Note)の「Autumn Leaves(邦題「枯葉」)」である。マイルス・デイヴィスが参加したアルバムで、マイルスがこのシャンソンの名曲のアレンジも提供した。「枯葉」のジャズ・バージョンとして最も有名だろう。ブレイキーは伴奏に徹したブラシ演奏をストイックに聴かせている。

映像はアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズがファンキー・ジャズで爆発的な人気を博した頃の欧州でのライブ。バンド・メンバーのテナー・サックス奏者ベニー・ゴルソンが作曲したバラードの名曲「Whisper Not」である。

Philly Joe Jones

フィリー・ジョー・ジョーンズは「黄金のクインテット」と呼ばれた1950年代のマイルス・デイヴィス・クインテットのドラマー。フィリー・ジョーのブラシ演奏はマイルス・クインテットのバラード・ナンバーで聴くことができる。

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スタンダードの名曲「When I Fall in Love」が収録されたのはアルバム『Steamin'』(Prestige)。マイルスのミュート付きのスリリングなトランペット・ソロをサポートする優れたブラシ演奏が聴ける。この他、同時期にマイルスが録音した「My Funny Valentine Day」「It Never Entered My Mind」「In Your Own Sweet Way」などでも、フィリー・ジョーはブラシで演奏している。

映像はビル・エヴァンス・トリオフィリー・ジョーがブラシ演奏を聴かせたライブ。曲目は「Peacocks」。フィリー・ジョーは不定期だが長年にわたりエヴァンスと共演した。

Elvin Jones

この人のブラシ・プレイは規格外である。エルヴィン・ジョーンズほどアグレッシブなブラシ演奏をしたドラマーを他に知らない。ワイヤーブラシなのにまるでスティックのように強烈に叩く。エルヴィン独自のアクセントも奔放である。

エルヴィンは1960年代を代表する屈指の名バンド、ジョン・コルトレーン・カルテットのメンバーとしてよく知られている。そのコルトレーンのアルバムでは、『Live! at the Village Vanguard』(Impulse)の「Softly, as in A Morning Sunrise」、『Ballads』(同)の「Say It」などでブラシ演奏が聴ける。

もう1枚、忘れてはならぬのがトミー・フラナガンのアルバム『Overseas』(Prestige)で、全曲ブラシの名演を聴かせていることだ。傑作として名高いピアノ・トリオ作である。

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「Sweet Little Maia」は、エルヴィンのアルバム『Puttin' It Together』(Blue Note)に収録されたジミー・ギャリソンの作品だ。
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映像は『Puttin' It Together』の録音と同メンバーで渡欧時に行なった「Sweet Little Maia」のライブ・バージョン。ライブでのブラシ・プレイはさらに強烈である。

Ed Thigpen

エド・シグペンはブラシの名手として人気を博した。ブラシ・プレイの教則本やDVDをリリースしている。シグペンのブラシ・プレイは華麗で精緻であり、格別なよさがある。

シグペンは1959~65年にオスカー・ピーターソン・トリオのメンバーとして活躍した。その時期のピーターソン・トリオはピアノ・トリオの代名詞的な存在であり、「ザ・トリオ」と呼ばれた。ピーターソン時代のシグペンのブラシ・プレイは、『We Get Request』(プリーズ・リクエスト)(Verve)の「You Look Good to Me」、『Fiorello』(同)の「Till Tomorrow」などで聴ける。

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ピーターソン以外では、女性ピアニスト、ユタ・ヒップの『Jutta Hipp at the Hickory House Vol.1&2』(Blue Note)でブラシの名演をみせている。アップテンポでスイングする「Star Eyes」では高度なブラシ・プレイで真価を発揮する。

映像ではシグペンが驚異のブラシ・テクニックをみせてくれる。

Paul Motian

ポール・モチアンビル・エヴァンスが率いた最初のレギュラー・トリオのドラマーとして広く知られる。ピアノのエヴァンス、ベースのスコット・ラファロ、ドラムのモチアン。この3人だ。このメンバーでは4枚のアルバムしか残していないが、ジャズ史上最も有名なピアノ・トリオになった。

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悔恨のバラード「My Foolish Heart」はエヴァンス得意曲で、生涯、何度も録音している。モチアンがブラシの名演を聴かせた大人気ライブ・アルバム『Waltz for Debby』(Riverside)の演奏が代表バージョンである。また、エヴァンス・トリオのスタジオ録音の傑作『Portrait in Jazz』(Riverside)の「Autumn Leaves」では、ブラシとスティックの両方を駆使する妙技を聴くことができる。そのほか、キース・ジャレット・トリオチャーリー・ヘイデンとの共演などで、モチアンは印象的なブラシ演奏を残している。

映像は女性ピアニスト、アナ・フォートと共演したライブ。2011年9月の収録となっている。モチアンが世を去ったのはこの2か月後だ。

Joe Morello

ジョー・モレロデイブ・ブルーベック・カルテットのドラマー。モレロが在籍した時代(1956~67年)のブルーベック・カルテットは、全ジャンル対象のビルボード200のアルバム・チャートに大ヒット作を次々に送り込んだ。正統派のジャズでは珍しいことだった。

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ディズニー映画の名曲を演奏した『Dave Digs Disney』(Columbia)は、世に出た当時は大ヒットしていないが、時代を超えて人気のあるアルバムになった。そこに収録された「Some Day My Prince Will Come (いつか王子様が)はモレロのブラシの妙技を楽しめるナンバーでもある。映画『白雪姫』から生まれた名曲だ。

ブルーベック・カルテットは変拍子を使ったユニークな曲が多かった。リズムをくり出すモレロの技術の素晴らしさが複雑な曲でも楽しみやすいものにしているのだろう。

映像はブラシの教則DVDからの抜粋で、ベテランになったモレロが軽妙な演奏を披露している。

Steve Gadd

スティーヴ・ガッドはジャズ、フュージョン、ポップスなど、ジャンルを超えて活躍するスーパー・ドラマー。ポップス系はセッションマンとしての参加だが、伝説のフュージョン・バンド、スタッフを筆頭にガッド・ギャングマンハッタン・ジャズ・クインテットなど、ジャズ・フュージョン畑のバンドでも華やかな活躍をみせた。ジャズとフュージョンを股にかけるドラマーの中では、演奏も存在感も別格だろう。正確無比なタイミング、グルーヴを生みだすタメのあるビート感など、ガッドならではの魅力である。

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ガッドはブラシの名手でもあり、ベテランになってからブラシで演奏する機会が増えている。20数年ぶりに突然リリースされた彼自身のリーダー・アルバム『Live at Voce』(邦題『ガッド・ライヴ!』)(BFM Jazz)では 、ジャズ・スタンダードの「Bye Bye Blackbird」をはじめ、ガッドのブラシ・プレイがたっぷり楽しめる。

映像はガッドがハミングしながら「Bye Bye Blackbird」をブラシで演奏するライブを収録したもの。時折、ズシンと入るバスドラにも注目したい。

Clarence Penn

クラレンス・ペンは現代の最も優れたジャズ・ドラマーの一人。ワイルドさと繊細さを兼ね備えた演奏で人気を博している。彼が演奏すれば、リズムやビートが野生の生き物のように躍動するスリリングな瞬間が何度もある。希有な才能の持ち主ではないだろうか。

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クラレンスは世界の多彩なアーティストと共演しているが、日本では小曽根真ピアノ・トリオのメンバーとしてよく知られているだろう。そのトリオの第1弾『The Trio』(Verve)は小曽根の新たな大躍進の始まりとなった。「A Happy Cat」をはじめ、数曲でクラレンスがみせたブラシ・プレイの名演も鮮やかな印象を残した。

映像は小曽根真トリオライブ収録したオリジナル・バラード「Asian Dream」。ひかえめなブラシ演奏だが、聴き逃せない魅力がある。

■この記事の筆者:高井信成のブログ「BUSBEAT」

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